難民の受け入れ問題、どう向き合う?

今月2日、トルコのリゾート地ボドルム近郊の浜辺にシリア難民と見られる幼児の遺体が打ち上げられ、その映像が世界中に大きな衝撃を与えました。それから20日余り、ドイツを筆頭にヨーロッパ諸国では積極的に難民の受け入れを拡大してきました。

欧州連合(EU)が「難民危機」への対応を急ぐなか、22日にブリュッセルで開いた臨時の閣僚理事会では、シリア難民ら12万人の受け入れ分担が賛成多数で可決されました。現地時間のきょう開かれる臨時首脳会議でも引き続き難民問題を協議する方針です。しかし、閣僚理事会で分担に反対した中東欧諸国はなお反対姿勢を強めており、議論が再燃する恐れもあるようです。

先日、ハンガリーのテレビ局の女性カメラマンが、子どもを抱きかかえながら警察から逃げているシリア難民に足を引っかけて転倒させるという事件がありました。世界中の怒りを呼んだニュースでした。ハンガリーや、チェコ、スロバキア、ルーマニアは22日の理事会での採決には反対を投じ、EU内でも難民に対する考えは異なるようです。ハンガリーのオルバン首相は21日の議会演説で「移民がハンガリーを席巻しようとしている」と訴えました。一方、財政難に苦しむギリシャでは難民らの身元確認や一時的な滞在許可証の発給作業が遅れ、不満を募らせた難民らと警官隊が衝突する事態も起きています。

経済協力開発機構(OECD)は22日、移民に関する報告書を公表しました。シリア情勢の不安定さからEUに押し寄せる難民数は過去最高を記録すると予測した上で2015年に最大100万人の難民申請があり、35万~45万人が認められるとの見通しを示しました。増え続ける難民をその国に首尾よく取り込むには、早期に語学習得などの支援をすることが不可欠だと主張しています。

「難民受け入れ」に対するネガティブなイメージが先行し、反対を投じる国があるのも当然かもしれません。同じEUメンバーとはいっても個々の文化や宗教を理解すべきだと思います。受け入れる側の体制が整っていなければ、ギリシャのように難民と警官隊の衝突が生まれます。大切なことは、難民受け入れに対するそれぞれの国の「できる範囲での協力」でしょう。日本も、遠い国の話ではなく世界全体の問題と捉え、積極的に難民問題に取り組まなければなりません。

 

参考記事:

9月23日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)7面(国際)「難12万人割り当て合意 EU、緊急内相理事会」

 

同日付 読売新聞朝刊(大阪14版)9面(国際)「EU12万人受け入れへ 理事会で承認」

 

同日付 日本経済新聞朝刊(大阪14版)4面(国際)「EU、難民12万人分担可決 臨時閣僚理、多数決で 中東欧諸国、なお反発姿勢」