「東京オリンピック・パラリンピック」を巡る諸問題【後半】

7月23日に東京オリンピックが開会して、今日でちょうど一週間です。

この記事に先んじて、今月10日は「前半」と称して1日~10日までの五輪及び新型コロナに関する状況をまとめました。

今回の記事でも、前回に引き続き30日までの状況を振り返ってみたいと思います。

12日には東京に4度目となる緊急事態宣言が発令されました。しかし、現在の新規感染者数の推移を見ても分かるように、宣言によっても人流は抑制されず、横ばい状態を維持しています。アメリカやフランスなど、28カ国を対象に行われた13日の国際世論調査では、東京五輪の開催に関して、賛成派47%に対し、反対派が53%と賛成派を上回りました。また、今月半ばには、海外からの選手団の入国がピークを迎えました。海外選手団の新型コロナ感染防止対策として実施されている「バブル方式」についても、五輪関係者のコロナ感染やそれに続く濃厚接触者の発生などが報告され、バブルもはじけてしまうのではないでしょうか。

この7月中旬までの様子を見るだけでも、五輪に対し暗雲が立ち込めていることは一目瞭然です。

本記事の執筆にあたって、過去の新聞を見返していると、16日の朝日新聞朝刊の1面に「東京感染『4週間後は2406人』」という記事が載っていました。しかしながら、当然に知っているように、それから半分の2週間も経たない7月27日には2848人の新規感染者が確認され、優に2406人という数字を超えました。

東京五輪は21日、開催の是非が議論され続けるなか、福島県での日本対オーストラリアのソフトボールを皮切りに、競技が始まりました。

その2日前の19日には、開会式の楽曲制作に携わっていた小山田圭吾氏が過去に自身がしていた「いじめ」の問題を巡り、楽曲制作担当を辞任しました。そして、これに続き、開会式を翌日に控える22日には、開会式演出の主導的役割を担ってきた小林賢太郎氏が解任されました。小林氏は、お笑いコンビ「ラーメンズ」時代にホロコーストを揶揄するような表現をコントに用いており、これが外交上の問題にもなり得るとして、組織委員会が解任を決定しました。

開会式を目前に、五輪を巡る新型コロナの感染状況悪化、感染対策の不十分さなどが叫ばれるなかで、その開会式までもが渦中の問題となりました。

23日、新国立競技場にて開会式が開かれました。
皆さんは、どのような気持ちを抱いて、約60年ぶりに開催された東京五輪の開会式を視聴したのでしょうか。1年の延期期間を経て開催された五輪を待ち遠しく思い、「やっとこの日が来たのか」とワクワクした気持ちで見た方もいれば、もはや純粋に見ることができず、直前の開会式の問題などを思い浮かべながら見た方もいるのではないでしょうか。

柔道、卓球、競泳、そして新種目のサーフィン、スケートボードなどで、日本代表選手の努力の結晶とも言うべきプレーを、そして時には、首から下げられたメダルと花束を手に微笑む選手を見て、最初は五輪を開催すること自体に限界を感じていた筆者も、純粋に選手の頑張りに共感し、歓喜しています。

本記事執筆に際し、筆者は友人、他あらたにすスタッフなど計17名を対象に「オリンピックについての意識調査」と題し、開会の前後でどのような意識の変化があるのかを調べてみました。

(Googleフォームにて自動作成)

多少なりとも五輪開催を疑問視していた人として、反対派と「どちらともいえない」派を合わせて考えると、52.9%で肯定派の47.1%とほぼ拮抗することが分かりました。反対派の意見としては、五輪の影響による感染拡大の心配や五輪開催までの経過への懸念の声が多く、肯定派では、「アスリートの努力が報われて欲しい」など、選手に対する思いからオリンピックが開催されて欲しいと思う人が多かったようです。

(結果を基に筆者が作成)

次に、上記のグラフは開催後についての項目の調査結果です。

開催前の結果と比較すると、「開催して良かった」など、実際に競技などを観戦し、改めて自国開催のオリンピックを楽しんでいる人が多いことが分かりました。

まだまだ続くオリンピックでは、是非とも日本代表選手には頑張って欲しいのはもちろんですが、このムードに完全に飲まれてしまうのではなく、冷静に日本の感染状況、国の感染対策を見て、「まだまだ」新型コロナの脅威にさらされているという事実を確認していかなければならないと思います。

 

 

参考記事:

12日付 読売新聞夕刊(東京4版)1面「東京 4回目緊急事態開始」

14日付 朝日新聞夕刊(東京4版)1面「『五輪開催反対』57% 国際世論調査」

15日付 朝日新聞朝刊(東京14版)33面「来日選手団 不完全なバブル」

16日付 朝日新聞朝刊(東京14版)1面「東京感染『4週間後は2406人』」

20日付 朝日新聞朝刊(東京14版)1面「五輪開会式の曲 一部削除」

21日付 朝日新聞朝刊(東京14版)1面「東京五輪 きょう競技スタート」

23日付 読売新聞朝刊(東京14版)1面「開会式演出 小林氏解任」

24日付 読売新聞朝刊(東京14版)1面「東京五輪 開幕」