五輪開幕 3紙の社説を読み比べる

東京五輪がついに開幕を迎えました。オリンピックの開催について、賛否両論がある中、日本経済新聞、読売新聞、朝日新聞がそれぞれ、23日付朝刊の社説で、東京五輪開幕への姿勢を示しています。新聞社によって、着目点、意見などはどう異なるのか。3紙を簡単に比較してみました。

 

〈日本経済新聞 東京での開催を五輪再生の出発点に〉

1 肥大化のひずみあらわ

はじめに、国立競技場のデザイン変更、エンブレムの使用中止、招致をめぐる贈賄疑惑、森喜朗前会長の女性軽視発言、楽曲担当の音楽家が学生時代のいじめ行為での降板など、さまざまな問題が発覚した後も問題を先送りし、解決になかなか動きださないことが国民の五輪熱が高まらない一因だと指摘しています。

加えて、飲食・観光業が苦境にあえぐ中、開催の意義について、人びとが心から納得できるような明確な言葉が国や自治体のトップから発信されなかったことや開催費用の増大などが人びとと五輪の間に隙間をつくったとしています。

2 価値を実感できる場に

世界の人びとが五輪の価値を実感することを期待する一方で、組織委員会や国、都に対して、感染拡大を阻止しつつ、これまでの反省を踏まえた適切な大会運営を求めています。

 

〈読売新聞 コロナ禍に希望と力届けたい〉

幾多の困難に見舞われ

大会運営を巡る数々のトラブルにも見舞われながら、東京五輪開幕を迎えたことから、大会を通じて、逆境でも諦めないことや地道に鍛錬を積み重ねることの大切さを世界に示す機会としたい、としています。

2 露呈した欠陥改めよ

五輪を機に、国内外に感染を広げないことが成功のカギを握っていると肝に銘じ、対策の見直しを進めねばならないとしています。

さらに、選手や関係者は自覚ある行動を、観客は競技場と自宅間の直行直帰を守るように求めています。

3 選手の活躍を記憶に

様々な制約のなかで、努力を続けてきた選手が躍動する姿は人びとの記憶に深く刻まれ、コロナ禍に苦しむ世界の人びとに希望が届いてほしいとしています。

 

〈朝日新聞 分断と不信、漂流する祭典〉

1 理念と説明欠くまま

招致後、コンパクト五輪構想の破綻、経費の膨張、招致を巡る買収疑惑、責任者の相次ぐ交代と続き、高揚感も祝祭気分もないと指摘し、菅政権は科学的知見や国民の不安を無視して突き進んだと批判しています。

2 感染防止を最優先で

主催者は感染防止策の徹底、命や生命を守ることを最重要課題と位置づけ、中断や中止の可能性を排除せずに大会に臨むべきだとしています。

3  選手にエール等しく

日本の選手、外国人選手に等しくエールを送ることで、ナショナリズムの発露の場になりがちな五輪に、新鮮な息吹を吹き込むことを望んでいます。

主張は様々でしたが、共通していたのが、「更なる感染を阻止すること」。改めて、マスク着用、手洗いなど、感染拡大防止に向けて、当たり前のことを徹底していかなければなりません。

参考記事:

23日付日本経済新聞朝刊(東京13版)2面「東京での開催を五輪再生の出発点に」

同日付朝日新聞朝刊(東京13版)8面「分断と不信、漂流する五輪」

同日付読売新聞朝刊(東京13版)3面「コロナ禍に希望と力届けたい」