コロナ禍の祭、変化と楽しみ方

梅雨が明け、いよいよ夏本番。屋外で部活をしている筆者にとって「最大の敵が来てしまった」という気持ちです。とはいえ夏ならではの行事に心躍ってもいます。

都内府中市の夏を象徴する、「すもも祭」を訪れました。大國魂(おおくにたま)神社で毎年7月20日に行われ、すもも販売に加えてさまざまな露店が並ぶ「すもも市」とともに親しまれています。源頼義、義家が戦勝のお礼参りをした際、神前にすももを供えたことが始まりです。

都内府中市の大國魂神社(20日筆者撮影)

 

境内に入ると、行きかう人の手には烏が描かれた団扇。祭当日に頒布される「からす団扇・扇子」です。平安時代の『古語拾遺』で、農作物を害虫から守り、病気や災難を払う方法として「からす扇を以って扇げ」と書かれていることに由来しています。筆者の分と、ヘルニア治療のため入院が決まっている祖父の分を購入しました。

からす団扇。災難が祓われ、玄関に飾ると幸福が訪れるそう(20日筆者撮影)

手水して早速参拝列に並びます。15分ほどで神前に進み、二礼二拍手一礼。コロナの終息を願いました。

ただ、伝統ある祭も例年通りとはいきません。混雑回避のため、昨年からすもも市は中止。祭に欠かせない露店の姿はありませんでした。からす団扇・扇子の頒布も18日から20日までの3日間に分けられました。

毎年7月20日に行われるすもも祭。コロナ禍で変化もあった(20日筆者撮影)

せっかく来たのに、すももを買わずして帰っていいものか。神社近くの青果店に足を運びました。

創業130年以上の「蕪木(かぶらぎ)青果店」には、祭帰りのお客さんも多く、お話を伺った常連さんも毎年団扇は欠かさないそう。4代目のご主人に「露店が出ない分、すももを買いに来る方は増えましたか」と質問すると、意外な答えが返ってきました。

「実は今日、すももより桃の方が売れているの」と笑って教えてくれました。

糖度13度以上の甘く、大きな桃を買い求めるお客さんが多かったのだとか。

「美味しいもの以外は売りたくない」というご主人の言葉通り、冷やしたすももは甘味が強く、果肉がたっぷり詰まっていました。さすがプラムの王様「貴陽」。祭の余韻に浸りながら贅沢な時間を楽しみました。

青果店で購入したすもも。甘酸っぱくぺろりと完食(20日筆者撮影)

母にもらったお小遣いを握りしめ祖父に連れて行ってもらった地元の祭。初めて友達とだけで行った神社の祭。楽しい思い出に、今回の体験も加わりました。人にもみくちゃにされながら露店を見て回ったり、その場で頬張ったりが当たり前だった祭の風景を恋しいと思いつつ、密を避けながら自分だけの楽しみを探すのも悪くない。夏の風物詩、形は変われどもいかようにも楽しめます。

 

参考記事:

20日付朝日デジタル 「山あげ祭」無観客で開催

21日付朝日デジタル 夏の対策呼びかけ、デルタ株で「夏祭りも2メートル」