中国「推し活」過熱 ファンの心得とは

本日の朝日新聞朝刊に興味深い記事がありました。国際面に掲載された「中国『推し活』過熱 アイドル人気ランク競争 逸脱行為、当局が処罰」です。記事の舞台は中国。「推し」のアイドルの人気をどんな手を使っても高めたいという一部のファンが、ネット上でサクラを使ったりライバルを中傷したりするなど、過激な言動が社会問題化しているそうです。ネット管理当局は規制強化に乗り出しているとも書かれています。

この記事に惹かれたのは、私自身K-POPを推しているひとりのファンだったからです。他人事のように思えませんでした。大学に入学してからは同じ韓国音楽でもヒップホップやR&Bに関心が移りました。そのため今は離れていますがオタク歴は小学5年生から高校3年生までと長めです。

K-POPは東方神起のステージを見て、韓国にはこんなにかっこいい人がいるのかと感動したことがきっかけでハマりました。それからは東方神起、SHINee、KARA、BIGBANG、B1A4、Apink、BEASTなど対象を変えながら、いろんなグループを推してきました。学生なのでお金のかからない範囲で彼らのことを応援していたのが今ではいい思い出です。

ではなぜアイドルの追っかけをやめたのか。日々流れてくる情報の量に付いていけなくなったうえ、ファンが過激になってきていることに見ていて疲れたからです。小学館が運営する総合ニュースサイト・NEWSポストセブンの記事では、K-POPに詳しい女性ライターが韓国のファン文化について以下のように答えています。

K-POPのファン文化は独特です。日本人の感覚からするとやり過ぎではないかと思うほど、アイドルに踏み込んでいく傾向があります。例えば“チクドク”と呼ばれる、アイドルの追っかけをして一眼レフなどで本格的な写真を撮るファンがいますが、彼女たちはアイドルの芸能活動についてまわり、コンサートや公開収録時の写真だけでなく移動中の私服写真も撮影し、どんどんネット上にアップします。

このチクドク(チクは撮る(찍다)、ドクはオタク(오덕후)のことを指す)ですが、筆者が高校生になったくらいから一気に存在感が増した気がします。小学生や中学生の頃はミュージックビデオや音楽番組でしかアイドルの姿を見られませんでした。それがいつの間にか出勤の様子や飛行機の搭乗前後など様々な場面で見ることができるように。いろんな姿を見られるのはファンからしたら嬉しいことですが、自分自身チクドクと同じく一日中監視しているようでストレスも感じていました。

またサセン(私生活を意味する「사(サ)생(セン)활(ファル)」、ファンを意味する「팬(ペン)」を合わせた言葉。過激なおっかけ)と呼ばれるファンもいます。ネットが発展していくにつれ、サセンの行動も過激になってきており、筆者が見ていたBTSのライブ配信でもメンバーが宿泊するホテルを突き止め、部屋まで押しかける様子が映っていました。

一部ファンの過激化は中国や韓国だけとは限りません。日本でも「PRODUCE 101 JAPAN」、「Nizi Project」などオーディション番組が増えてきて、自分の推しをどうにかしてデビューさせてあげたいと他の候補者を蹴落とそうとする姿を見ることがありました。

アイドルとの距離感は以前と比べて近くなっているように感じます。私生活を覗いている気分にもなれます。しかし、自分はアイドルを推している一人のファンでしかないことは忘れてはいけません。アイドルは夢や癒しを与えてくれる存在ですが、それと同時に普通のひとでもあります。推しがいる人にはその点を忘れずに「推し活」を楽しんでほしいものです。

 

 

参考記事:

2021年7月20日朝日新聞東京13版国際面 「中国「推し活」過熱 アイドル人気ランク競争 逸脱行為、当局が処罰」

参考資料:

NEWSポストセブン「K-POPアイドルを追う“チクドク”と過激な“サセン”の違い