先月末、沖縄県を訪れました。青い海、白い砂浜。絵に描いたように美しい海が広がっていました。ここは名護市辺野古です。そんな穏やかな海とは対照的に、米軍基地の前では、普天間基地移設に反対する人々が座り込み運動をしています。「MARINES OUT」「辺野古埋立阻止」などと書かれたプラカードを持つ人が、移設反対を訴えます。筆者が訪れたのは金曜日の正午ころでしたが、40人ほどが集まっていました。多いときでは1日に延べ240人ほどが集まり、基地移設に反対する人々と、政府の案を支持する人々の対立が毎日絶えないようです。殺伐とした空気。「戦後70年」という言葉に虚無感をおぼえました。
移設計画では、普天間飛場に替わる基地施設を造るため辺野古湾岸部約160ヘクタールを埋め立てる予定です。先月10日、同県と安倍政権が合意した1ヶ月の作業中止期間が始まりましたが、一昨日の12日政府は県との集中協議のために1ヶ月間中断していた移設作業を再開しました。沖縄防衛局は、船舶の立ち入りを制限する区域を示すフロート(浮具)などの設置準備を始めました。これに対し、翁長雄志知事は埋め立て承認を取り消す方針を正式に表明しました。12日に発表したコメントは、「今後もあらゆる手法を駆使して、辺野古に新基地は造らせないという公約の実現に向け全力で取り組む」と訴えています。
そして今日午前、翁長知事は同県庁で記者会見し、移設予定地の名護市辺野古の埋め立て承認を取り消す手続きに入ったと発表しました。今月28日に国側の反論を聞く場を設けた後に、正式に取り消しを宣言する見込みです。「移設阻止」を掲げて2014年11月に初当選した翁長氏。承認の過程を検証する第三者委員会を設置するなど活発に動いてきました。
基地移設については、賛否両論あるようです。「辺野古に移設できなければ、普天間の撤去が白紙に戻るのではないか」という懸念や、「海上に基地を移設するのが最善の代替策だ」という声。しかし県内世論の反発などを踏まえ、翁長氏は改めて「辺野古移設反対」の強い姿勢を示す必要性があると判断したとみられています。
基地移設問題は、簡単に結論が出せるような問題ではありません。筆者も実際に現地を訪れましたが、何が最善策なのかは自分の中でもはっきり分かりません。ですが今日の翁長知事の発表を知り、政府に屈することなく公約の実現に懸命に取り組む姿勢は素晴らしいと思いました。「翁長さんにがんばってほしい」。そう話してくれた辺野古の人の顔が思い浮かびました。
皆さんは、基地移設に対してどのように考えますか。少しだけでも考えてみませんか。
参考記事:
9月12日付 朝日新聞・日本経済新聞夕刊
9月13日付 日本経済新聞朝刊(大阪13版)2面(総合)「辺野古移設、政府が作業再開 沖縄県との対立再燃」
9月14日付(10時29分) 朝日新聞デジタル 「沖縄知事、承認取り消しの手続き開始 辺野古埋め立て」