野田氏の挑戦は自民党のイメージアップになったのか

自民党総裁選は、無投票で安倍首相の再選が決まりました。野田氏が出馬を模索していましたが、20人の推薦人を集めることができませんでした。

野田氏の推薦人確保に当たり、自民党内では「締め付け」が行われていたそうです。党内議員が野田氏の推薦人になったことが明らかになると、首相や菅官房長官が、秋以降の人事についてちらつかせる電話を直々にかけた、と記事には書かれています。この「締め付け」については問題があると考えます。党内での議論はきちんとするべきであるし、そして何より、派閥や人事ばかりを気にした議員は民意をきちんと反映することができていないからです。

そんな中、目を引いたのは、朝日新聞に掲載されていた京大大学院教授の待鳥氏の「安倍政権のやり方に不満を持つ有権者にとって意味があるように見えて、実は自民党にとってのメリットしかないだろう。」という意見です。たしかに、野田氏が仮に20人の推薦人を集めることができたとしても、結局は安倍首相が再選になっていたでしょう。そうなると、野田氏の「挑戦」は、有権者からは支持され、その野田氏が所属する自民党の不支持率は下がるものの、党の方向性自体は何も変わっていないことになります。むしろ、安倍首相はそれをいいことに、今までの姿勢を貫くことになるでしょう。これでは、イメージは変わっても、中身は何も議論されずに変わっていないということになります。

今回の野田氏の「挑戦」は各紙で大きく報じられ、多くの有権者の共感を得ることができたでしょう。しかし、これがただのイメージアップで終わっては意味がないと考えます。自民党の思う壺です。ただ、今回の自民党総裁選と、野田氏の頑張りは、「頑張らなかった」議員をより浮き彫りにしたようにも感じられます。これを機に、党内での議論を活性化してほしい。特に、「民意」ではなく「人事」を気にした議員には、責任を感じ、きちんと国民の意見を反映してほしいと思います。

 

9月9日付 朝日新聞朝刊(13版)1面、総合面、オピニオン面

9月9日付 読売新聞朝刊(13版)1面、総合面

9月9日付 日本経済新聞朝刊(12版)1面、政治面