パクったのか、パクってないのか─。2020年東京五輪の大会エンブレムに模倣疑惑が生じた問題。制作を担当した佐野研二郎氏(43)は「模倣や盗作は断じてしていない」と主張しますが、最終的にエンブレムは使用中止・撤回となりました。エンブレム自体の疑義もそうですが、主因となったのは「佐野氏自身」の仕事ぶりです。「この人はもう信じられない」。私の素直な感想です。
東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は1日、エンブレムの使用取りやめを正式に決定しました。「国民の理解が得られない」というのが主な理由です。
そもそも、この問題の発端は何だったのか。それは、佐野氏のエンブレムとベルギーの劇場のロゴマークが似ているとの指摘が上がったことです。両者を見比べると、たしかに似ています。劇場のロゴを担当したベルギーのデザイナーはその後、エンブレムの使用差し止めを求め提訴しました。
その次に、佐野氏がデザインしたトートバッグの転用問題が浮上。サントリーの懸賞賞品用に監修したトートバッグが、他の作品のデザインと酷似していました。この問題に関して佐野氏は、スタッフが第三者のデザインを転用していたことを認めています。
決定打となったのは、エンブレム原案の模倣疑惑と活用例の写真無断流用です。エンブレムの原案段階のデザインが、13年に都内で開かれた展覧会のポスターと類似。また、佐野氏がエンブレムの活用例として使用した写真は、個人サイトに掲載されたものと酷似していました。佐野氏は前者の模倣は否定し、後者の流用は認めました。
繰り返して言うと、佐野氏はエンブレムの模倣、盗用は否定しています。しかし、です。佐野氏の他の仕事ぶりを見ると、世界的な祭典である五輪に関わらせるのは、はっきり言って嫌です。技量は十分。過去の功績を見ても申し分ないのでしょう。でも、私はデザイナー・佐野研二郎をもう信用することができなくなっています。
エンブレムの模倣疑惑、トートバッグの件でそれぞれ空振り1、2。そして写真無断流用で3回目の空振り。三振です。ということは、「バッター交代」です。タイミングもここしかなかったのでは、と思います。
参考記事:
2日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)1、2、社説、社会面
同日付 読売新聞朝刊(同版)1、総合、社説、解説、社会面
同日付 日本経済新聞朝刊(同版)1、3、社会面