アマゾンにみるエッセンシャルワーカーの現状

「米軍より過酷」‥‥巨大I T企業アマゾン・ドット・コムの厳しい労働環境を取り上げた記事を読み、先週末見たドキュメンタリー番組「NHKスペシャル ビジョンハッカー~世界をアップデートする若者たち~」を思い出しました。

番組では「ビジョンハッカー」と呼ばれる社会課題の解決に向けて実際に行動を起こす若者たちに注目し、その1人としてアマゾンを相手に闘うクリスチャン・スモールズさんが紹介されていました。

スモールズさんはアマゾンの倉庫で働いていた際、コロナ感染対策の徹底と従業員の安全確保などの労働環境の改善を訴えたところ、解雇を言い渡されたと言います。自らの苦境を世界に訴えるためにSNSを活用し、巨大企業を相手にも屈しない勇敢な姿勢が印象的でした。

冒頭で紹介した記事では、アマゾンの過酷な労働環境が別の従業員の目を通して紹介されています。待遇改善を求めるその切実な訴えは、社内・社外という立場の違いはあれど、スモールズさんの主張と重なる部分があると感じました。

先月、アラバマ州にあるアマゾンの物流倉庫で、労働組合結成の是非をめぐる従業員投票がありました。アメリカでの格差是正に向けた動きとして注目されましたが、反対票多数で否決されてしまいました。その後、投票期間中にアマゾンが労組結成に反対するよう呼びかけるポスターをトイレなどあらゆるところに掲げていた実態が明らかになりました。

アマゾンなど物流の現場で働く人々に限らず、トラック運転手、スーパーの店員、配送ドライバー、医療従事者など、私たちの生活は多くのエッセンシャルワーカーに支えられ成り立っています。しかし、ライフラインを維持する大切な仕事であるのにも関わらず、彼らを取り巻く労働環境は厳しい現状が多い。これは今回の舞台であるアメリカだけでなく、日本含め世界共通です。

日頃お世話になっている便利なサービスは、働き手であるエッセンシャルワーカーたちの犠牲の上に成り立っているのかもしれない。記事と番組を通して、これまでその便利さを当たり前に思い、ネットで商品をポチッと購入してから家に届くまでの裏側に目を向けてこなかった自分に恥ずかしさを覚えました。それと同時に、こうしたサービスの恩恵を受けていながらもその現状を変えられないことに無力さも感じました。

コロナ禍の緊急事態宣言下ではなかなか店頭に足を運べず、オンラインショッピングの機会が増えました。自分の購買行動が働き手の労働環境と直接関わっていると考えると、とても複雑な気持ちになります。まずはこうした現状を良く知り、意識を向けることから始めていきたいと思います。

参考記事:

19日付 朝日新聞デジタル 「「米軍より過酷」なアマゾンの現場 ベゾス氏の本心は?」

参考資料:

NHKスペシャル「ビジョンハッカー~世界をアップデートする若者たち~」

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