生き残りをかけた企業の知恵

 先月半ば、友人と訪れた飲食店に消毒液はありませんでした。客が少ないのをいいことに、近くには休憩時のアルバイトが数人いて、マスクもせずに大声で話している有り様です。「ちょっとこの店、まずい気がする」。友人の一言でしんとなり、無言で食べてそそくさと店を後にしました。いまだに感染対策がなされていない飲食店があることに驚きを隠せません。マスク会食など客のマナーが求められるのなら、働く人、提供する場のモラルはそれ以上に重要視されるべきだと思いました。

そんな折、8日に読売新聞に掲載されたサイゼリヤの記事が目に留まりました。

7日、平均的な店舗の4割ほどの広さの小型店を報道陣に公開した。パーティションを設置したカウンター席を設け、新型コロナウイルスの感染拡大のもとでも1人客などの取り込みを狙う。

早速、行ってきました。店は都内の地下鉄赤塚駅の出口を出てすぐ、ビルの一角にあるコンビニのような小さな建物でした。

8日に開店したサイゼリヤ地下鉄赤塚店(9日筆者撮影)

案内されたのは、入り口を入ってすぐ右にある見晴らしの良い席。仕切られたその空間は例えるのなら学習塾の自習室です。パーティションには「感染防止に関するお願い」が貼ってあります。

パーティションで区切られたカウンター席(9日筆者撮影)

午後3時半の時点でお客さんは私を合わせて8人。そこからわずか15分の間に3人が入れ替わりました。1人客が中心だからこそ回転率は良く、店舗が狭いため換気も十分に行き届きます。ここなら安心して飲食をすることができる。思わず友人と行った飲食店のことを思い出し、感染予防対策の徹底ぶりに感心させられました。

従業員は計4人。お会計の際にレジを担当してくれた店長らしき男性に勤務形態を尋ねてみました。「今は開店時なのでこの人数ですが、今後はもっと減らした状態で回していきたいです」とのこと。人員を減らしてコストを抑える。非常に賢い戦略だと思います。というのもサイゼリヤは今年度、36億円の赤字を見込んでいます。まさにピンチをチャンスに変えようとしているのです。

 

昨日の朝日・読売・日経の3紙はそろってイオンの赤字を取り上げていました。その額なんと710億円です。日経新聞には、イオンの吉田社長のコメントとともに次のように書かれています。

「オンラインデリバリー=イオンというイメージを作っていく」考えで、店舗と物流の双方から顧客に商品を届ける体制で構築する。

デジタル関連の売上高で1兆円という目標も掲げています。窮地にあるイオングループの今後の行方が気になります。

そもそも何故こんなにも膨大な赤字が出るのでしょうか。その答えは「緊急事態宣言」と「消費者の行動意識の変化」にあると言います。巣ごもり消費を取り込んだスーパーやドラッグストアは好調ですが、コロナ禍で来店客が減った大型商業施設やコンビニエンスストアなど数多くの企業が業績悪化に陥っています。

サイゼリヤ地下鉄赤塚店のようなコロナ禍に相応しい切り口で、赤字を打破してくれる会社が続くことを強く願います。

 

参考記事:

8日付 読売新聞朝刊(埼玉13版)8面「サイゼリヤが小型店」

10日付 読売新聞朝刊(埼玉13版)6面「巣ごもり 食品スーパー好調」

10日付 朝日新聞朝刊(埼玉13版)7面「イオン赤字710億円」

10日付 日本経済新聞朝刊(埼玉12版)7面「イオン最終赤字過去最大」

参考資料:

7日 TBSニュース 「ピンチをチャンスに、大手飲食チェーン 新たな“お店”とは」https://news.yahoo.co.jp/articles/254f0b3e040587e33101152861b961063c2bf933