途上国のワクチン事情 〜ルワンダの事例〜

累計3.2億回。世界中でコロナワクチンの接種が進んでいます。米英独などの先進国から、アジアやアフリカ、中南米の途上国まで、実施国・地域は既に130を超えました。凄まじい速さです。筆者は世界各地の友人とコロナ関連の情報をほぼ毎日共有しているのですが、最も早く接種したのはルワンダの友人でした。今回は、ルワンダ大学医学部5年生のイシンビ・オノレ君へのインタビューを掲載します。

ルワンダはアフリカ大陸中央部に位置する、小さな内陸国です。人口は1.2千万人。94年に発生した内戦が有名ですが、現在、治安は安定しています。長期政権を握るカガメ大統領は経済政策だけではなく、コロナ抑制を重視してきました。首都や地方の村落などで躊躇なくロックダウンに踏み切ったことで、累計感染者数は2万人。死者は275人。オーバーシュートの事態には至らず、政府はなんとか感染状況をコントロールできている状態です。

――予防接種はいつ受けましたか。痛みは感じましたか。
3月8日にファイザー・ビオンテック製ワクチンの1回目の接種を受けたよ。コロナ専門病棟で医者として働いている訳ではないけど、毎日、大学病院で臨床参加型の実習(clinical clerkship)に参加しているから、優先的に受けることが出来たんだ。筋肉注射だけど全然痛くなく、その後も特に問題なし。21日後に、2回目を受ける予定。

――ルワンダ全体の接種状況はどうなっていますか。
進捗は極めて順調。既に25万回以上接種が行われた。(筆者注:日本は15万回)ごく一部の人に倦怠感や微熱などの副作用が生じているけど、今のところ、深刻なアナフィラキシー反応は一切報告されていない。僕含め、医療従事者の多くが2回目を待っている状態だよ。その次に、高齢者、軍人と警察、教員、一般市民の順番で進められる予定。

――既に25万回とは、かなり迅速ですね。
政府は、22年7月までに国民の約半数にあたる600万人への接種を終える計画を立てている。なので、国民全員が完了するにはおそらく2〜3年を要すると思う。ワクチンを購入するための資金が不足すれば、さらに長期化するかもしれない。まだまだ道のりは長いなあ。

――カガメ大統領も接種したと聞きました。
医療従事者でも高齢者でもないけど、大統領夫妻は率先して接種しなければならなかった。なぜなら、誤った噂や宗教的信条を理由に、予防注射を受けたがらない国民が一部いるからね。ワクチンを望む人が大半とはいえ、大統領夫妻が自ら安全性をアピールしたのは非常に有意義な出来事だ。

――ファイザー製は超低温での輸送と管理が必要ですが、大丈夫ですか。
政府は多額を費やして、保管冷凍庫や高性能保冷剤を購入済み。−70℃を保つことは可能だよ。地方の医療センターにワクチンを送り届けるため、軍のヘリコプターも利用している。

――COVAXの枠組みや国際的なワクチン確保競争についてどう思いますか。
COVAXは素晴らしい制度だよ。発展途上国でも簡単に申し込めるからね。かたや先進国が持ち前の財力を振るって、大量のワクチンを予約してしまっているのも事実。ただ、一概に不公平とは言えないよ。各国政府が、自国民の安全を最優先させたいと考える気持ちは十分理解できる。そうでないと、経済活動を本格的に再開させることが出来ないもの。

――ワクチン以外に不足しているものがあれば教えて下さい。
病院の防護服やマスクは足りているよ。強いて挙げるとすれば、他の国々と同様にコロナ検査キットかな。大量にあれば国民全員を一斉に検査できるのだけど、今は濃厚接触者のみを対象にしている。あとは医者も不足しているな。医者1人に対し患者8人以下が一日の診療人数として望ましいとするWHOの指針に対し、ルワンダでは、医者1人が毎日約50人を診察している。この数値でも、近年改善されてきてはいるんだけどね。

――間もなく大学を卒業しますよね。予防接種が済んでいても、医者として働くことは怖いですか。
恐れは一切ない。僕は人を助けたいと思って、医師になることを志した。たとえ自分が感染症にかかる可能性があったとしても、僕はリスクを恐れず、患者さんと正面から向き合うよ。

 

参考ウェブサイト:

Ministry of Health | Rwanda  https://twitter.com/rwandahealth

ルワンダ保健省のツイッターには、ワクチン集団接種の様子を撮った写真がたくさん載っています。上記のURLから、是非ご覧ください。

注射されるカガメ大統領(保健省のツイッターより)