マスク反対主義者と扇動的なメディアによる被害者とは誰か

1月16日、17日に実施された大学入学共通テスト。コロナ禍という状況下、大学入試センター試験に代わる新たな試験。受験生にとって「未体験」が重なる異例の入試になりました。しかし、今回ニュースで大きく取り上げられたのは、鼻出しマスクが不正行為とされ、全科目を無効にされた受験生でした。

49歳の受験生が鼻を出した状態で入試に挑んでいました。試験監督者は正しくマスクを着用するように再三指示しましたが、それを拒否。係員が連れ出そうとしても居座り、結局は他の受験生が別の教室に移動するという始末。その後、会場のトイレに逃げ込み、午後10時頃に建造物不退去で現行犯逮捕されました。

「49歳にもなって何をやっているんだ」「他の受験生が可哀想」など、ネットでは批判の嵐です。しかし、問題は受験生の年齢でもなく、鼻出しマスクでもないと思います。注意を受けた後の受験生の対応と準備不足です。

昨年9月、関西空港に向かうピーチ・アビエーションの機内で、乗客がマスク着用を拒否し、乗務員を威嚇する事件がありました。席の移動を頼んでも従わず、独自の反論を繰り返し続けました。その結果、関西空港への到着予定を大幅に遅れ、他の客に多大な迷惑をかけました。

今回の事件と共通するのは、「注意を受けた後も素直に従わない」「独自の理論で他人に迷惑をかけている」「事前の申し出を怠っている」ことです。たとえ健康上の理由を挙げても、傍若無人な態度は擁護できるものではありません。

今回の事件で正しいマスクの着用が、改めて脚光を浴びることになりました。しかし、連日のニュースでは「鼻出しマスク」という言葉が先走りしている印象です。そもそも感覚過敏や発達障害などの理由で、着用が難しい人もいます。マスクをしていないという外見だけで、無用なトラブルに巻き込まれる人が増えるのではないかと危惧しています。

独自の理論で正義を貫くマスク反対派、センセーショナルな言葉を列挙するメディア。本当の被害者は、健康上の理由でマスクを着けたくても着けられない人です。今回の事件に関しても、問題は当事者の準備不足と注意後の行動です。事件のきっかけでもある「鼻出しマスク」というワードを伏せて、数件の不正行為が起きたことだけを報道するべきだったのではないかと考えています。

参考記事:

18日 朝日、読売、日本経済新聞 各紙朝刊 コロナウイルス関連記事