筆者が通っていた中学校、高校の制服制度が変わったと知ったのは昨年3月のこと。男子女子関係なく、制服のズボン、スカートを自由に選べるようになったと、同級生が電話で教えてくれました。
通っていた福岡市立の中学校では、全69校のうち65校で制服が変更されました。(2019年10月現在)筆者が中学生だった時は、学ラン、セーラーでかつデザインも中学校によって異なりました。20年度から一新され、ブレザータイプが採用されました。また、生徒の希望でズボンとスカート、キュロットが選べるようになりました。学校によって色の指定はあるものの、ネクタイとリボンの選択も可能に。
高校の制服制度が変わったのは、19年夏から。元々はブレザーのジャケットに、男子がネクタイ、ズボン、女子がリボンにプリーツスカートという組み合わせが標準とされていました。しかし一昨年夏から、ズボン、スカート、リボン、ネクタイの組み合わせが自由になりました。冬服も夏服も共通です。
LGBTQへの配慮や動きやすさ、気候に合わせて制服をカスタマイズできるようになったことは時代の変化に適応していると言えます。ただ、それがゴールではありません。
高校の後輩に聞いてみると、男女で新制度の浸透に差が生まれているとのこと。1年以上経ち、同学年で5人ほどズボンを着用する女子生徒を見かけるように。ネクタイに関しては、多くの女子生徒に浸透しているそうです。一方の男子生徒は、これまでと何も変わらないのが現状です。
とは言え、女子生徒がすぐに変化に順応した訳ではありません。市立中学校の制服販売店に「ズボンとスカートの両方を買う女子生徒は多いのか」を聞いてみました。入学式でどちらを着たいかという基準で選ぶことを勧めているが、やはり初日は周りの様子を見たいからとスカートを選ぶ人が多いといいます。
同級生2人と「もし中、高校生のときにこの制度があったらズボンを履いたか」と話してみると、いずれとも様子を見ると答えました。
「制服は、集団のなかで生活するための服というイメージが強い。そうなると、一度周りの様子を見てしまうと思う」
もちろん個人が自由に選択することが醍醐味なので、どれほど浸透しているかは重要ではないかもしれません。しかし、本当に新制度を利用したい人が周りを気にして悩んでしまう環境のままでは、誰もが快適に過ごすという目標にははるかに及びません。新しい制服の制度が、全員のためのものであり、何者にも干渉されるべきでないと、学校でも家庭でも繰り返し呼び掛けていく必要があります。
「ズボンが好きだから、ズボンを履いているという認識になればいいな」
同級生と、もう着ることのない制服に思いを馳せました。
参考記事:
19年1月24日付読売新聞西部朝刊「新制服候補を試着」
同年2月4日付日本経済新聞夕刊「女子もスラックスOK」
同年5月14日朝日デジタル「「自分らしい制服を」見直し70年ぶりでキュロットも」
同年5月15日付西日本新聞「中学新制服はブレザー 福岡市の検討委が了承」
同年10月2日付朝日新聞朝刊(福岡)「福岡の市立中学校、65校が新制服採用」
21年1月19日付読売新聞朝刊(12版)16面「コロナ禍 私服との選択制」、関連17面