教師を目指す人へ

犯罪のない、もしくは少ない社会にするために、どうすればいいのか—。この頃考えています。昨日の朝刊には、女性を遺棄した容疑で29歳の男性保育士が逮捕された事件に、心を痛めました。

最近手に取った本を紹介します。『ケーキの切れない非行少年たち』です。すでに65万部に達しているそうです。児童精神科医である著者が、医療少年院で出会った非行少年たちの実態を書いています。本屋さんで目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

 

筆者が購入し、撮影した。

 

殺人、強盗、強姦などの凶悪犯罪を起こした少年たちは、認知能力が低いということが述べられていました。例えば、丸いケーキを3等分することができません。2等分にした後にどうしていいかわからなくなるそうです。これでは、非行の反省や被害者の気持ちを考えさせるような従来の矯正教育を行っても意味がないと容易に想像できます。彼らのような人は、人口の14%程度いるとされていて、知的障害とまでは言えませんが、現代社会で生きていく上では相当程度の困難に直面していると考えられています。

著者が提案するのは、コグトレ(認知機能強化トレーニング)です。漢字という複雑な形を認知できない人に対して、何度も書き写させるのではなく、まずは点と点を写す作業からトレーニングさせよう、という取り組みです。コグトレは市販されていて、私も本屋さんでパラパラと読みました。これなら、クイズやゲーム感覚で続けることができるのではないかと思いました。

彼らの苦しみに気付き、何らかの解決策を提示し、訓練することができる場所は、学校などの教育現場だと思います。大学2年まで教員になることも考えていた私は、ハッとさせられました。先生が、子どもたちの足りないことを見極め、訓練させることができれば、犯罪を減らせる可能性があるということです。

ただ、きめ細やかな指導ができていないのが現状ではないでしょうか。授業だけでなく、部活動の指導もあり、毎日が忙しいと思います。教員になるとやりがいはあるけれど、自分の時間はない、と大学の授業で聞いたこともあります。まずは、教員を目指す人が、この本を手に取ってほしいなと思いました。

参考記事:

7日付読売新聞朝刊(東京14版)31面(社会)「女性不明29歳男を逮捕」

朝日新聞好書好日「宮口幸治『ケーキの切れない非行少年たち』 『人に頼られたい』気持ちが自己評価向上のカギに」