電気通信業界にビッグニュースです。無線給電技術の実用化を見据えて、総務省が3帯域の電波の利用を企業向けに許可する方針を決定しました。パナソニック、オムロン、東芝などが無線局の設置を届け出て、実験を開始する見込みです。
そもそも、皆さんは「無線給電」についてご存知でしょうか。通信電波を使って、デジタル機器を遠隔から給電できる技術のことです。具体例を挙げましょう。現在、殆どのスマホは、端末にケーブルと充電器を挿して、コンセントに繋げないと、電力が補充されない仕様になっています。しかし、この技術が導入されれば、送信機から一定の範囲内に放置するだけで充電可能。私たちの家に散乱する何十本ものコードの存在、および、デジタル機器を毎日充電する手間。全て不要になります。
企業は、無線局の設置を総務省に届け出ることで、屋内の無人環境での実験に取り組むことが出来ます。利用できる3帯域は、920MHz、2.4GHz、5.7GHz。それぞれ、携帯電話、マラソン中継に使う移動放送、アマチュア無線、などに近い周波数となっています。電波を遠くに送り届けることが出来るのかはもちろん、人体への影響や、他の通信機器との電波干渉具合についても検証されます。進捗次第では、今後、屋外や有人環境での実験も許可されるようになるでしょう。
電子情報通信学会に所属する筆者の先輩によると、部屋からは電源コードが、地上からは送電線が消える。さらに進歩すれば、宇宙太陽光発電、すなわち、宇宙空間上で太陽光発電を行い、その電力を地球上に送ることも可能になる。車も飛行機も潜水艦も、全て無線給電で動く時代が来るかもしれない、とのこと。我々の日常生活から最先端の発電構想にまで関わってくることを考慮すると、ビジネス的に莫大な利益を生み出すのは間違いありません。
もちろん、こんなドル箱事業、日本の大学や企業のみが取り組んでいる訳ではありません。日経新聞によると、開発競争は日米中による激しい争いの真っ只中。特許や規格競争では、互角で競っているものの、米国では、連邦通信委員会が一部企業に電波の使用を既に許可済み。製品開発は先行されている模様です。
負けるな日本!今回、電波割り当てが決まったので、開発スピードは加速するはずです。産学官の連携により、コードレス社会が一日も早く実現されることを楽しみにしています。
参考記事:
29日付 日本経済新聞朝刊(大阪12版)2面「無線給電 日本で実用化へ」
参考ウェブサイト:
「電気の未来社会 未来は、コードやケーブルがなくなる?」(パワーアカデミー)
https://www.power-academy.jp/electronics/familiar/fam02000.html
「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの技術的条件」に関する提案
(ブロードバンドワイヤレスフォーラム、ワイヤレス電力伝送WG)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000611759.pdf