AKB48 グループ継続へ正念場

慌ただしかった2020年も年の瀬が近づいてきました。年末といえば、やはりNHK紅白歌合戦。先日、今年の紅白に出場する42組が発表されました。初出場は10組。中でも注目は、アイドルグループNiziUとBABYMETALでしょう。大学生の筆者の周囲では、よく話題に上がります。歌もダンスも切れ味抜群のパフォーマンスに期待したいものです。

同時に波紋を呼んだのは、AKB48の落選です。昨年まで11年連続で出場していました。NHKによると、落選理由は「総合的な判断」。AKBグループ総監督の向井地美音さんは、自身のTwitterで「この2年間、先輩方が繋いでくださったバトンを私たちの代で何度も止めてしまいました。そして今日も。それが何より申し訳ないし不甲斐ないです」と悔しさを滲ませました。

一世を風靡したAKBが、ついに紅白まで不出場となると盛者必衰の理を感じざるにはいられません。約8年前、筆者が中学生になった頃は人気うなぎ登り。クラスメートは、まゆゆは歌が上手いだの、こじはるが美しいだの、いや、ゆきりんの方が可愛いだの、口々に推し自慢をしていたものでした。企業や官庁は『恋するフォーチュンクッキー』の職場ダンス動画を次々と公開し、AKBの軽快な歌とダンスは社会現象そのものでした。しかし、ここ数年は人気が落ち込み、ライブの空席も目立つようになってきているようです。

握手券や総選挙の投票券をCDに付属して販売する「特典商法」はコロナで限界を迎えました。シングルは、例年3〜4曲発表していたものの、握手会が出来なくなった今年リリースできたのは1本のみ。コロナ対策支援ソングとして発表した、配信限定の楽曲『離れていても』は握手券が付いていなかったためか、ダウンロード数3000以下で、オリコンのランキング圏外になりました。今後、グループの規模を維持するのが難しいのではないか、という予測すらあります。コロナ禍で音楽業界は大打撃。大手事務所エイベックスですら、希望退職を100人募っている程ですから。

AKBの人気が落ち着いた理由については、様々な要因が挙げられています。乃木坂46や欅坂46などがヒット曲を出すようになり、坂道シリーズのオーディションに有望株が流れるようになったこと。姉妹グループのNGT48でトラブルが起きて、イメージが著しく傷ついたこと。人気メンバーが相次いで卒業し、グループとしてのメディア露出の機会が減少したこと、などが重なった印象です。

ただ、先行きを悲観するのは時期尚早です。アイドルグループの先駆けであるモーニング娘。も、かつて同じ壁にぶち当たりました。97年に結成されたモー娘。は、オーディションによる新メンバーの加入、という形態が注目を集め、00年頃に国民的アイドルグループとして全盛期を迎えました。しかし、結成当初の新鮮さが徐々に失われ、現役・OGメンバーのスキャンダルも重なった結果、07年を最後に紅白に出場しなくなりました。冠番組が消え、バラエティ番組への出演も激減しました。

そこで、モー娘。は香港や韓国、台湾など、海外でライブを開催するようになり、新しいファン層の獲得に努めました。また、新メンバーの加入を暫く停止。ライブパフォーマンスの質を高めるべく、既存メンバーは歌とダンスの練習を重ねました。その努力に加えて、EDM曲の導入や某天才ダンサーのグループ加入があり、13〜14年にはシングル5作連続オリコン1位を達成。現在も、一定数のコアなファンを囲い込み続け、「閉じコン」としての円熟味は年々増しています。

マーケティング戦略を重視してきたAKBが同様にV字回復を果たせるのか。それとも、衰退の一途をたどってしまうのか。往年の勢いを失った今、その真価が問われています。

参考記事:

17日付 読売新聞朝刊(大阪13版)31面「NiziU、瑛人さん 紅白」

紅白歌合戦の出場者たち(読売新聞オンラインより)