連日ニュースで報じられているアメリカ大統領選挙。私は小学生の頃にワシントンD.C.近郊に住んでいたこともあり、日本人の自分は投票できないというもどかしさを感じつつも、この一週間は常に選挙の行方を追っていた。
初の黒人大統領としてオバマ氏が誕生した2008年、私はアメリカの現地校に通っていた。その時一緒に通っていた多くの同級生が今では一票を投じる側にいる。SNSで投票を呼びかけたり、自身も投票したことを発信したりする彼らの姿は、物心がついた時にオバマ氏が就任したことも影響しているのか、アメリカの変化を体現する世代に見える。
彼らの声を聞いて思うのが、今回の選挙は「マシな方を選ぶ」というネガティブな選挙であったということだ。過激的な発言で国内の分断を生み出し、メディアによる報道をフェイクニュースだと罵るトランプ氏。こうしたトランプ氏を批判し、「国民を守り闇を終わらせる」と主張するバイデン氏。私の同級生のほとんどは民主党支持者であるが、積極的にバイデン氏を選んだというよりは、トランプ氏が当選しないように二者択一でバイデン氏に投票したという印象が強かった。
しかし、今回の選挙に関して、私は肯定的に捉えられることもあると思う。
1点目は、投票率が極めて高いということだ。今回はコロナ感染対策で利用が急増した郵便投票だが、期日前の郵便投票は約6500万人に上り、それだけでも2016年大統領選の総投票数の約47%にあたるという。支持者が誰かは別として、これだけのアメリカ人が自国の未来について考え、民主主義を実践している点は評価するべきだと感じる。この姿に日本人も見習うべきことがあるだろう。
2点目は、今回の選挙で、女性としても黒人としても初の副大統領誕生が生まれたということだ。バイデン氏の当選が確実になったことで、カマラ・ハリス氏の副大統領就任が現実になる。彼女の勝利演説をライブ配信で聞いた。「私は女性として初めての副大統領だが、最後にはならないだろう。今夜これを見ている全ての小さな女の子たちが、可能性のある国であることを知ったからだ」。その言葉に、私は自分が住んでいた頃のアメリカを思い出し、アメリカの多様性が再び戻ってくるような感動と期待を覚えた。
大統領選挙は終わりに近づいてきているが、それは新しい4年間の始まりということでもある。アメリカの行く先を今後も注目していきたい。
参考記事:
8日付 朝日新聞朝刊(東京14版)1面 「バイデン氏、当選確実 トランプ氏との激戦制す 米大統領選」