コーヒーを飲もうと立ち寄った建物のトイレにあった張り紙に、目を疑いました。「マスクは便器に捨てないでください」。よく見かける「トイレ内禁煙」の横に、新しく作られたであろう注意書き。コロナウイルスの蔓延がなければ、決して見ることのなかったものでしょう。
建物の清掃員に話を聞いてみると、今年になってからマスクが便器に流される例が急増したとのこと。注意喚起になればと張り紙をしました。そのトイレでは直径7cmほどの比較的細い排水管が使われているため、マスク1枚でも詰まりの原因になるのです。
「水が溢れることはしょっちゅうだが、今年はその原因がマスクばかり」
「マスクは紙だと思っているのかもしれないけど、不織布ですからね」
と、困り顔で話してくださいました。
各自治体でも、下水道に異物(マスク、手袋など)を流さないよう呼び掛けるようになっています。そのうちの一つ、熊本県あさぎり町では、ポンプなどの機械が停止する事態が発生。あさぎり町の広報誌「広報あさぎり2020年9月号」で、マスクや手袋が絡まり、緊急で除去作業を行った際の光景を見ることができます。
こういった事態は、マスクが紙からつくられているという勘違いから生まれます。もちろん、ポケットに入れていたマスクが便器に落ち、そのまま流してしまったという人も少なからずいるでしょう。ですが、2月に相次いだトイレットペーパーやティッシュペーパーの品切れも、マスクと原材料が同じであるというデマから生まれました。使い捨てマスクのほとんどは、ポリプロピレン、ポリウレタンなどが原材料であり、紙からつくられるトイレットペーパーとはまったく異なります。デマによって、スーパーやドラッグストアの従業員は大きな負担と感染リスクを背負いました。
私たちは緊急事態にこそ正しい知識が求められます。それが清掃員や小売販売の従業員などエッセンシャルワーカーの負担軽減、感染予防に繋がります。マスクは家でゴミ箱へ。
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(9ページに異物除去作業の写真が掲載されています)