骨太から読み解きます

「骨太の方針」とはどういったものでしょうか。毎年6月に経済財政諮問会議において出される方針で、その年の予算編成や重点的政策、改革事項なと提言するものです。2001年、省庁再編に合わせて予算編成の権限を首相官邸主導に変えようとする動きがありました。当時の小泉純一郎首相が初めてまとめたのが「骨太の方針」です。翌年度(02年度)は、財政健全化の第一歩として、国債発行額を 30 兆円以下に抑えることが示されました。具体的数値を掲げているので予算にメリハリがつきます。小泉首相の課題に取り組む本気度がうかがえました。

「骨太」を利用して予算に先手を打っておくことができます。このおかげで、首相がなにに力を入れているのか明確にできるのです。トップダウンでの政策決定に首相の強いリーダーシップをみることができます。しかし、近年の方針は「骨太」の効き目を感じることができません。小泉政権のあとの安倍、福田、麻生の各政権では野党の反対が強い政策をあまり盛り込めていないからです。

新聞で閣議決定された方針を読んだときは、安倍首相がなににウェイトを置いているのか知ることができるので、今後の展開が楽しみでした。でも30日に閣議決定された骨太方針では財政改善に向けた歳出抑制の目標値は明示されていません。社会保障の個別項目の抑制額も明記していません。具体的な数字を表に示すと、当然ながら健全化計画は国会や党内で争点になります。総理はあえて骨太の効果を避けたのではないでしょうか。私は首相が自らの力を発揮しようとしているのは財政にはないのだろうと解釈しました。ではなにに統率力をみせつけるのでしょうかー。

 首相は財源健全化より安全保障案

これは日本経新新聞に載っていた首相周辺の解説でもあります。「私は正しい。なぜなら総理大臣だからー」と安全保障法制度の議論で何回も繰り返す姿からも読み取れます。

09年に民主党が政権を取った頃、私は中学生。意思決定の迅速さこそがリーダーの資質であると思っていたので「決められない政治」にいらだっていました。今は、政治学や行政学を勉強してそれがすべてではないと学びました。決定のはやさが一概によいのかわかりません。スピード重視の決定では、多様な意見を法案に反映するのが難しい側面もありますし…。

今回は安全保障案の是非論について触れません。私は権力をどのように形成して組織をコントロールしていくかということに興味を覚えるのです。言葉や骨太の方針などからその時の主導者がどのような音頭取りをしていくのか発見できます。そして、「まあ任せておけば大丈夫」とあぐらをかいている自分はあまりにも無防備だと気がつきました。ただ目標値や政策を鵜呑みにするのではなく背後に隠された国の方向性を読み解く力を身につけたいものです。

 

参考記事:

7月1日付 日本経済新聞(東京14版)「長期政権へ制約回避」

7月5日付 朝日新聞(東京13版)「言葉から考える安保法制」