明日は世界の金融市場にとって、とても重要な一日になるでしょう。一国の選択に世界中の注目が集まり、各紙様々な論調でこの問題を取り上げています。今日は国民投票を明日に控えたギリシャの国民投票を考えていきたいと思います。
あす5日、ギリシャではEUが提示する財政緊縮策受け入れの是非を問う国民投票が行われます。緊縮策を受け入れた場合、年金のさらなる削減など、国民生活への影響が確実視されるだけでなく、政権が退陣する構えを見せており、親EUの政権が樹立されず、EUとの交渉が進展しなかった場合、受け入れに関する交渉や手続きに遅れが見られ、混乱が生じる懸念が生じています。受け入れを拒否した場合、EUに対し債務の減免や緊縮姿勢の緩和を要求するとみられますが、決裂した場合、ユーロ圏からの離脱も避けられないとされ、デフォルトも予想されています。どちらにせよ、「茨の道」は避けられない中、急進左派連合に所属するチプラス首相は3日のテレビ演説で国民投票がユーロ圏残留を問うものではないとして、「反対」への投票を呼びかけていますが、地元紙の世論調査では賛成が41.5%、反対が40.2%と、世論も真っ二つに分かれています。
筆者としては、大阪都構想の際と同様、あくまでギリシャのことはギリシャで決めるべきだと言いたいのですが、債権を有していたり、共通の通貨を用いているEUがいることやギリシャの決定が今後の金融市場に大きな影響を与えることも想定され、投票結果が国際社会に与えることも考慮すると、ギリシャだけでは決められないのが現実です。そんなギリシャだけで決定できない問題を抱えていることもあり、朝日新聞では政府への失望から賛成する国民とEUへの不満から反対する国民の声が掲載されました。反対派の主張は「これ以上の緊縮は人権問題だ。」や「借金を返す緊縮ではななく、普通の暮らしができるようにしてほしい。」など、紙面から緊縮に反対する思いが伝わってきました。
では、ここから本題です。反対派が前述したような意見を述べていましたが、非難すべきはEUやその緊縮策なのでしょうか。筆者はそうは思いません。賛否を問わず、非難されるべきはまずギリシャという国そのものだと考えています。ギリシャは観光業以外に目立った産業がありません。国民の4分の1が公務員で、手厚い年金も保証されていたことなど、社会主義政権の影響が残っています。38兆円もの赤字を2兆円と偽り、国際的な競争に合わせた政策が取らなかったことや財政状況を偽っていたことなど、運営能力や信用の面で大きな問題があり、このような国家運営では今日のような事態に陥ることは当然ではないでしょうか。そして長期的な国家運営を想定せずに、今の生活だけを考えて投票を行っていた国民にも問題があるのではないかとも考えています。このような状況において「救助」されるかたちでEUから借り入れを行ったにも関わらず、債権国を満足させるような改善策を取らずに政権や国民がEUを非難をするというのは筋が通らないのような気がしてなりません。賛否を問う前にまず、ことの経緯を振り返ることが先ではないでしょうか。
問題の原因は他者であるとしながらも、本当の原因は自分たちにあるかもしれないという事実、果たしてギリシャ国民はその事実に気づくのでしょうか。
参考記事:4日付各紙朝刊(東京14版)関連面