菅義偉内閣が発足してから、はや2週間。慌ただしい引き継ぎを終えて、ようやく新体制は足が地についてきたでしょうか。外交や経済など、大半の分野で安倍政権の基本姿勢を継承していますが、その中で目立つのは、河野行革相と平井デジタル相の動きです。
河野大臣は、就任翌日に早速、行政改革目安箱を設置。各省庁に対しては脱ハンコ化を進めるよう要請し、次は書面とファックスをやめたいとも述べました。平井大臣が目指すのは、省庁や地方自治体、行政機関の間でデータが円滑にやり取りできるようにすること。そして、マイナンバーカードの普及と利便性向上が、新しい庁の使命です。二人の積極的な姿勢が、行政の効率化を加速させることを筆者は期待しています。
同時に、政府内部だけにデジタル化の動きをとどめて欲しくないとも思っています。日本全体に嵐を巻き起こすぐらいの勢いで、特に産業界や大学、研究機関に強く働きかけて欲しいです。
筆者が通う大阪大では、書類手続きやハンコの押印による事務処理が未だに蔓延っています。学内バイトを申請するには、家で印刷した書類に手書きで必要事項を埋め、押印して、事務室まで持って行きます。学務に関する通知も、事務室窓口まで取りに来るよう指示されることが多々あります。
今年5月には、東北大が「オンライン事務化宣言」を発表し、学内手続きの押印を廃止したことが、新聞やネットで取り上げられました。詳しい状況は分かりませんが、この程度の出来事が話題になってしまうことで、日本の大学のレベルが知れます。シンガポールから留学している友人も、世界基準から遅れていると話していました。
欧米や中国に留学する同級生はネットで出願できたけど、私だけは出願書類を手書きで作成して郵送した。高校の成績証明書も英語版では通用せず、日本語訳をつけなければならなかった。担任の先生には『何で面倒な手続きが必要な日本の大学なんか受験するの!』と言われた。
このような無駄の数々が、教員、研究者、学生の活動の足を引っ張っているのです。日本の大学が世界大学ランキングで順位を大きく下げている要因の一つでもある、と筆者は感じています。
菅内閣としては政府内の改革が最優先ですが、その次には、産学に対しても圧力をかけて欲しい。例えば、文科省が大学とやり取りする際、紙媒体ではなく、データ文書の提出を求めたり、共通テストへのオンライン出願を可能にする、等の動きを進めれば、大学の側もデジタル化の流れに従うのでは。産業界に対しては、経産省が同様の働きかけをすべきでしょう。
千里の道も一歩から、などと悠長なことは言っていられません。因習を打破してやる。そんな強い意思のもと、迅速にデジタル化を進めていくことに期待しています。
参考記事:
朝日新聞、日本経済新聞、読売新聞 デジタル庁・行政改革 関連記事