中国で、食べ物のむだをなくす「光盤行動(食べきりキャンペーン)」が広がっているそうです。日本に根付いている「もったいない精神」からの行動かなと思いましたが、どうやらそうではないらしい。今朝の朝日新聞の記事が気になって熟読しました。
きっかけは、先月、習近平氏が「浪費は恥、節約は栄誉だという雰囲気をつくれ」と重要指示を出したことです。新型コロナが世界の食糧生産や流通に影響を及ぼしていることが念頭にあります。ただ記事には、この呼びかけの背景にはもう一つ理由があると述べられていました。米中対立で、将来的な食糧確保への不安を抱えており、14億人の胃袋を満たすという課題を背負っている政権の危機感が見え隠れしていることです。
これを読み、差し迫った食糧危機こそ感じていないけれど、他人事だとは思えませんでした。食糧がなくなることへの不安や恐怖を、最近味わったからだと思います。コロナ禍の今年3月、近所のスーパーで思わず撮影した写真をご覧ください。
自粛期間で、カップ麺、乾麺、レトルト食品、米、豆腐、牛乳などが棚から消えていました。その後、このようなことは起こっていませんが、私たちが食料を調達できなくなる事態が再び起こるのではないか。行きつけのスーパーの方に電話で話を聞いてみました。
「コロナ禍のように、需要が通常の10~20倍になると、すぐに同じような状況が起こりえる」と断言していました。その理由は、裏に広い在庫スペースが確保できないためです。店頭に並べてあるもののほかには、ほとんどストックはないそうです。また、商品を運ぶトラックは平常時の需要に合わせぎりぎり間に合う数で稼働しているため、急増した需要に合わせてトラックや人手を増やすことが難しいと話していました。コロナ禍のように、どのスーパーでも同じようなことが発生していたらなおさらです。話を聞いているとスーパーの棚に物がなくなることは簡単に起きてしまうことだとわかりました。これらは、自粛期間の買い占めが原因ですが、気候変動で食糧難になる可能性も考えられます。7月の長雨で、野菜の価格が高騰しました。近年毎年のように大型台風が接近し、災害が増えている中で、安定して手に入れることができなくなる可能性があると肌で感じています。
食糧が確保できないと、不安に襲われます。歴史的に見ても、人々の胃袋を満たすことが政権維持の要です。習近平氏が、事前にできる対策はしておこうと考え、残飯を減らすことを促すのは当然でしょう。しかし、記事でも指摘しているように、浪費を減らすことを強制したり、法律で縛ったりすることには、違和感を覚えました。
飲食店では、体重計を店内に置き、体重の軽い客は食べる量も少ないという想定で、少ない量のメニューをすすめる仕組みを取り入れていたり、ネットで流行していた大食いの生中継が禁止になったりしました。浪費行動には罰則が設けられる見通しだそうです。
そこまでする必要があるのでしょうか。そもそも中国では、食べきれないほどたくさんの食事を出すのが客へのもてなしという習慣があるそうです。まずはそれを崩していくことが大切だと思います。
食べきりキャンペーンで導入されているのが量も値段も半分にした「半人前」メニュー。これらを注文したり、見かけたりすることをきっかけに、食べられる分だけ食べればいいんだと、考えるきっかけを与えられたらと思います。
日本には、もったいない精神が根付いています。食べ物を残したら感じる罪悪感は、それが自分の中に浸透しているからだと再確認することができました。中国で暮らす多くの人々が「もったいない精神」に気づき、過剰な食糧消費を抑えられたらいいのに。
22日付朝日新聞朝刊(東京14版)5面(国際)「世界発2020 半人前メニュー 中国の危機感」