炊き出しで見た ホームレスの姿

6月13日18時。私はホームレスの人々への炊き出しがある池袋に向かいました。

コロナ禍のもとでの暮らしについて考えてきたからです。普段は見えない「ネットカフェ難民」が、ネットカフェの休業に伴い行政の用意した宿泊施設に移動するという報道に触れ、路上生活者が、定額給付金の10万円を受け取ることができないことも知りました。気になっていました。

池袋駅から徒歩5分ほどの公園には、150人ほどが食料を求めて列を作っていました。配られていたのは、パン(食パンもしくは菓子パン)、お弁当、ミニトマトのパック、バナナ1本です。

当日はあいにくの雨。遠くから歩いてくる人もいます。晴れていたら200人以上集まっていたとのことでした。並んでいる人の様子はさまざま。多かったのは、街で見かけるような人です。登山用のリュックを背負ったチノパン姿。スーツ姿。私と同世代くらいのリュック姿。イヤホンを耳から下げている人もいました。

もちろん路上暮らしをうかがわせる姿の人もいます。落としたトマトをそのまま口に運んでいる男性もいれば、傘で隠しながらもらったパンを食べている姿が忘れられない女性も。

炊き出しのスタッフの方にお話を聞き、見えないホームレスが増加していることがわかりました。路上生活者が減っている一方で、ネットカフェやビジネスホテルで日々を過ごしている人が増えているそうです。

厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)」/スクリーンショットで撮影

特に最近増加傾向にある若いホームレスは、路上は怖いと感じているそうです。夜に見回りをしていても、なかなか出会えない、と言っていました。ビルのすき間や、歩いていて人からは見えないような路上の物陰にいるそうです。行政だけでなく、支援団体ですら実態をつかむことはできていません。

どんな背景を持つ人がここにきているのでしょうか。障害を持っている人もいるという回答を得ました。得意不得意の落差が激しく、コンビニのアルバイトをクビになった人もいるそうです。得意なことを生かした職業に就けるのが望ましいのですが、なかなか出会えない。生きづらい世の中だと改めて考えさせられました。

見えないホームレスが増えることで、時間とともに統計上の路上生活者の数は限りなくゼロに近づくかもしれません。その陰で手を差し伸べなければならない人たちが見えなくなってしまう。深刻な状況です。

私はコロナで一切アルバイトがなくなりました。まだ学生ですが、収入がなくなることの怖さを身をもって知りました。テレビでは飲食店が閉店に追い込まれている姿も見ました。炊き出しに行けば、街で見かけるような人もいる。大げさかもしれませんが、いつだれがホームレスの状態になってもおかしくないかもしれないと感じたのです。

定額給付金の10万円は、住民登録をしていないと受け取ることができません。総務省は、簡易宿泊所やインターネットカフェといった一時的な宿泊施設でも住民登録を認めてよいと各自治体に通知しましたが、現場への浸透は十分ではないそうです。

誰一人、社会から排除しない仕組みを考える必要があると思います。誰かにとって生活しづらい世の中は、誰にとっても生きづらい社会につながります。今はまだ、私にできることは何かわかりませんが、今後も見守っていきたいと思います。

 

参考記事:朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞 コロナ関連記事