しわ一つない制服に袖を通し、よそよそしく学生同士で話している。そんな高校1年生をアルバイト先で見た。私は、母校の私立高校(東京都・中野区)で働いている。授業のある校舎から徒歩3分の自習専門の施設で受付をしているのだ。コロナの影響で休校が続き、昨日3カ月ぶりにシフトに入った。分散登校で、この日は高1しか見かけなかったが、私が想像していた以上に学校生活に慣れていないようだった。それもそのはず、6月までずっとオンラインでの授業だったからだ。毎年6月は体育祭の時期で、本来なら級友らとの仲が深まっている時期なのに、とも思った。
久しぶりに高校生を見て気になったのは、高3の受験生。私が想像しているより、はるかに大きな不安を抱いていることだろう。
今朝の朝日新聞では、来年1月16、17日に実施予定の大学入学共通テストの追試験について、文部科学省が「(コロナ禍での学習の遅れを取り戻すために)あらかじめ時間を少しほしいという受験生が選択できる追試」を視野に入れていることが報じられていた。従来の対象は「疾病、負傷などやむを得ない事情により受験できない者」だったが、萩生田文科相は「柔軟な対応」が必要と強調したそうだ。
学習が遅れた受験生が追試を受けられる選択肢を用意することが必要だと思う。アルバイト後に、在学中にお世話になった先生と話し、今の状況を私の受験期と比べたからだ。国語を教えている恩師は、いま高3生を担当している。まず、現在どのように授業を行っているのか聞いてみた。
6月からやっと分散登校が始まり、高3は週に2回通っている。授業は40分に短縮され、密を避けるように20人以上のクラスは半分ずつの授業を実施。先生は分身できないため、片方のクラスに中継をつなげるか、前半後半に分けて授業を行うか、工夫を凝らしている。
登校日以外はオンライン授業となる。生徒が真剣に勉強しているのか、どうやって分かるのだろう。質問すると、授業内容をメモしたノートをスマホで撮影して送ってもらうことで対応していると話してくれた。私も大学でオンライン授業を体験しているが、ノートの写真を送ることなどない。生徒の学習状況を把握しようと努力しているのが印象的だった。
久々に会った先生は、いつもより疲れているように見えた。4月から動画作成に追われ、授業が始まってからもコロナ感染対策で神経を使っているのだろう。しかし、いくら教員が気を配っていても、受験生はこれまで以上に自らを律して勉強に励まなければならない。日ごろのように、担任が生徒の学力や普段の様子を正確に把握するのは難しいからだ。
高3のときの私自身は、校内で友人が夜の7時ごろまで残って勉強する姿に刺激を受けていた。コロナ禍では、クラスメイトとは、週2回しか会わず、学校が終わってすぐに帰宅する。モチベーションを保つのも容易ではないだろう。受験生の不安や精神状態を考えると、柔軟な対応が検討されるべきだ。
記事の最後には、追試対応の難しさにも触れられていた。「新たに会場や試験監督官を確保するのが困難」などの意見が出ているらしい。検討作業はこれからのようだが、高校生の身になり現場の声に耳を傾けて決断してもらいたい。
参考記事:
13日付朝日新聞朝刊(14版)28面(社会)「学習の遅れた受験生 文科相『追試も視野』大学入学共通テスト」