テレワークで生まれる「格差」

緊急事態宣言が宣言されてから今日で1週間。この間に多くの企業がテレワークに移行し、大学でもオンライン授業が始まった。だが緊急事態宣言が出されてもなお、通勤時間帯の駅のホームには多くのスーツ姿が見られる。朝の山手線では、宣言後の平日3日間の乗客数は宣言前に比べて35%の減少にとどまっている。逆に言えば、出勤せざるを得ない人がこれだけいるということだ。

当然ながら、全ての仕事がテレワークで補えるわけではない。大企業の営業職や事務職が次々と在宅勤務へとシフトする中、企業によってはテレワークのシステムが整っていないところもあり、浸透度に差が出てきている。一方で飲食やエンターテイメント、美容などのサービス・接客業は物理的に業務そのものができなくなってきている。

こうしたテレワークの広がりによる「格差」は、派遣社員やフリーランスなど就業する場所や時間が契約で決まっている人に追い討ちをかけている。その一例が、最近街中でよく見かけるUber Eatsなどの飲食宅配代行サービスだ。コロナの感染防止で多くの人が外出を自粛し、飲食店のテイクアウトやデリバリーの需要が増えたことで、人気を集めている。飲食店の経営者も、営業中止の間の生活費を宅配で稼ぎ出そうと懸命だ。利用側だけでなく店側にもニーズがある。

問題は、こうした飲食宅配代行サービスは不特定多数の人との接触が避けられないことだ。飲食店での商品の受け取り、利用客の家へのお届け。テレワークで補うことのできない現場の仕事は、常に感染のリスクにさらされている。

だが宅配員は、Uber Eatsに業務委託されている「個人事業主」に当たるため、宅配中に感染しても労災の対象にはならない。テレワークや在宅勤務の導入がコロナ感染拡大の防止につながる一方で、こうした不平等を助長している可能性も考えなくてはならない。

これから先、テレワークの広がりが職種、雇用状態によってさらなる格差を生むことがあってはならない。感染を防ぐ環境づくりや法整備が求められるだろう。

 

参考記事:

15日付 朝日新聞朝刊 7面(経済)「(けいざい+)フリーランスの悲鳴:下 宅配不安「うつし、うつされるかも」」

14日付 読売新聞オンライン「山手線の通勤時間帯、前週利用者より35%減‥2月頭より6割減」