こういう時こそ議論を

最近は私も周りも、やはり新型コロナウイルスのことばかり考えています。未知のことが多いため、自分の家族や友達はもちろん、専門家同士ですら意見の方向が大きく異なることが多々あります。様々な立場の考え方と膨大な情報を前に、不安になり、考えるのに疲れてしまい、自分と違う意見に反論するのが億劫にもなりました。しかし、同時にこの数ヶ月間で、自分の頭で問題を考え続けること、他人と議論を続けることの重要性を改めて感じています。

 私が入っているボランティアの団体では、開催するはずだった企画をどうするか決めるにあたって、議論をかわしたり参考になる資料をシェアしたりしています。感染リスクをどう捉えるか、「不要不急」とはどこまでを言うか、どんな弊害が出ているのか、政府の対応はどうか…検討すべき課題は尽きません。

 私は、感染拡大に繋がる行動をすることで、より医療崩壊に近づいてしまうことを強く懸念していました。緊急事態宣言の内容についても、非常事態であるから経済が滞ったとしてもある程度は仕方のないものだと評価していました。しかし議論していく中で、「『命と経済』の問題ではなく、『命と命』の問題なのでは」という新型コロナ対策に疑問を投げかける記事(2020/4/5 BuzzFeedNews 下記参考資料)を知り、議論では次のような話も出ました。「過剰に怖がることで、自粛ムードによる社会的スティグマを後押しすることになり、社会の弱者の存在が無視されてしまう危険性もある。」自分一人では浮かばなかった視点です。「自粛」「命を守ること」が善だと言い切って思考を止めてはいけないと気づかされました。

 しかし、私が強く自分の意見を主張し、議論を深めることができたのはこのコミュニティくらいでした。友達や知り合いの社会人とコロナの話題になったときには、その人と反対の視点やその根拠をを示すことはなかなかできません。関係を崩したくない、軽く世間話として相手が話した一言を否定したくない、面倒くさいと思われたくない。そんな気持ちからです。

 でも、今こういうときこそ、身近な人とお互いの考えをシェアしていくべきだと思います。一人で悶々と考えて不安を抱え込むより、まずは言葉にしてみる。それに対する多方面からの意見を敬聴し、再考する。4月9日の日経新聞の記事には「情報パンデミックの危機」という言葉がありました。「インフォデミック」とも言われています。ネットでは噂やデマも含めて大量の情報が氾濫しています。自分が目にしているのは膨大な情報のごく一部にすぎません。そうであれば、なおさらのこと、近くの人と議論を交わすだけでも自分の視野を広げられると思います。

 

関連記事:

9日付 日本経済新聞 朝刊 (名古屋12版)2面(総合1)「データの世紀 情報パンデミック② AIの本領 生かすは人」

 

参考資料:

BuzzFeedNews 「問われているのは『命と経済』ではなく、『命と命』の問題」 医療人類学者が疑問を投げかける新型コロナ対策2020/4/5 https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-isono-1

 

日本経済新聞web版 コロナで注意「インフォデミック」とは2020/4/6

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57688620V00C20A4I10000/