「洋上の総合病院」日本にはいつ?

 

臨時休校にデマ情報、アフリカ各国の対策など。連日あらたにすは様々な角度から新型コロナウイルスに関する記事を発信しています。たったひとつの病気が人種差別を引き起こしたり、各国経済に打撃を与えたりしているのを一か月前の私たちは想像できたでしょうか。また、政治を自分にも関係のあるものとしてこれほど意識するようになるとは思ってもいませんでした。感染の拡大はいまだに続いており、いつ収束するのかわかりませんが、これをきっかけに若い世代が政治に興味を持つことになれば、不幸中の幸いなのかもしれません。

さて本日のあらたにすは「病院船」について。聞きなれない単語かもしれませんが、新型肺炎をきっかけに再び注目を浴びています。病院船とは有事の際に海上で治療する機能を持つ船のこと。これまでにも阪神大震災や東日本大震災など大規模災害が起きた時に導入が検討されました。

しかし、「建造費は140億~350億円」「最低2隻必要」「補完的な医療施設としては莫大(ばくだい)な金額を要する」「医療スタッフ確保など困難な問題が多数」など、内閣府がまとめた報告書によれば課題が山積していて、議論が停滞していました。状況が一転したのはダイヤモンドプリンセス号での集団感染でした。多数の患者を隔離しながら治療する方法として関心が高まったと言います。

病院船の導入と一口に言っても⓵新たに建造する、②民間船の活用、③自衛隊が持つ既存の自衛艦の活用など幅広い案があります。先月27日には「災害時医療等船舶利活用推進議連」という、新造に限らず民間船の活用も検討している超党派議連が発足。今月に入ってからも、3日には与野党の有志議員でつくる「病院船建造推進議員連盟」(「災害時多目的船(病院船)建造推進議連」に改称)が7年ぶりに会合を開き、国会議員約40名が出席しました。対する政府は導入や維持にかかる費用を考慮しながら検討を進める方針。やはりコスト負担が課題のようです。

 

 

 

(USA Military channelより/世界最大の病院船「マーシー」の内部映像)

 

筆者はこの記事を書くため、動画サイトYouTubeにアップされている病院船「マーシー」の映像を見ました。アメリカ海軍が保有しており、全長272メートル。1千床の病床や80床の集中治療室(ICU)があります。それ以外にも手術室が12室もあり、まるでまちにある大きな病院のよう。動画を視聴するまで、船に何百億円もかけるのはどんなものかと思っていましたが、陸とは違いどこにでも移動できる「洋上の総合病院」に可能性を感じました。また南海トラフ地震や首都直下地震などがいつ起こるかわからないような地震大国だからこそ早めの導入をしなくてはならないのかもしれません。

 

参考記事:

3月4日日本経済新聞朝刊政治面「病院船導入、機運再び 既存艦の活用案

2月15日産経新聞「病院船「検討」、閣僚相次ぎ発言 震災後検討も立ち消え