引っ越しのベストなタイミングって?

転勤族の父親を持つ私は、幼稚園、小学校と合わせて4回ほど転校を経験しています。会社の辞令は季節を問わずに出されたので、転入する時期は不定期でした。学習内容が重複あるいは一部抜け落ちることになり、苦労することもしばしば。幼稚園の年長だった弟は、卒園まで残り半年を切りながら、他の幼稚園への転入を迫られました。

大人に比べれば、子どもは環境への順応が比較的得意かもしれません。ですが、外部との接触が多く人事が流動的な大人の社会に比べ、学校は学級を単位とした固定的で閉ざされた社会です。既に人間関係が形成されているクラスに突然、馴染もうとするのは少し勇気の入ることでした。せめて新学期だったら、と何度思ったことか。

昨年から、国土交通省が引っ越しの時期を分散するように呼びかけています。経済団体を通じて、4月1日に集中しがちな人事異動の時期をずらすよう、企業に求めています。

背景には、業者が対応できなくなっている実情があるようです。進学や企業の人事異動による転勤などが集中する3月下旬から4月上旬は、依頼が他の月の2倍近い件数になることもあります。トラック業界のドライバー不足や働き方改革の影響で、事態はより深刻化していると言います。

ですが、進級や進学時期を外しての異動は、子どもを持つ人とその家族にとっては負担の大きい事案です。筆者は、中途半端なタイミングでの転校に苦労を伴いました。その経験から、その次の辞令が出ると思われる直前の4月、父親を残し母と弟と3人で東京に戻りました。辞令が出るまでのおよそ1年間、家族は離れて暮らすことになったのです。

年度末の異動は、企業や役所の長年の慣習でもあり、すぐに変えるのは容易ではないとも見られています。

一方、現状では希望の時期に引っ越せなかったり、料金が割高になったりするなどの事態が生じています。実際、時期をずらして引っ越した人からは「代金が安くなった」と歓迎の声も出ているようです。

私自身、転勤のある仕事に就くことになり、4月半ばに地方へ赴任することが決まっています。引っ越しに対しての抵抗はなく、むしろ楽しみではあるものの、家族を持ったときの子どもへの影響を想像すると複雑な思いに至ります。近頃は、そもそも転勤という制度に対しての批判もあります。

もちろん、引っ越し時期の集中を避ける道は模索する必要がありますが、分散によって家族が辛い思いをしたり離れ離れになったりすることは避けたいものです。

 

 

参考:

24日付 朝日新聞朝刊(東京14版)2面(総合)「引っ越し時期の分散を国がお願いしたって?」