医療・介護を知らない若者

皆さんは、家族の医療や介護について考えたことはありますか。今まさに勉強したり、家族と相談している読者の方もいるかもしれません。ただ、世の多くの若者はあまり考えたことがありません。

若者、特に学生にとって、親の医療や介護の問題は遠い世界の問題のように感じられがちです。両親が40代であれば、癌などの病気に罹患するとは想像もつきません。祖父母が病気を抱えていたとしても、同居していなければ身近な問題として実感しづらいでしょう。

私自身もそうでした。家族の癌の手術や認知症悪化を経験した今こそ、看護や介護方法について真剣に考えるようになりましたが、以前は自分に一切無関係のことだと感じていました。

しかし、平均寿命が延び、かつ高齢出産が増加する昨今、30代にして70代前後の親の看護、介護の問題に直面する人が増えています。30代は働き盛りの重要な時期です。残業や休日出勤を繰り返しながら、仕事に専念してスキルを磨き、昇進していこうと考えている人も多いでしょう。両親の世話は思いがけず負担となりうります。

単なる老化や病状の緩やかな悪化なら、徐々に心構えを作っていくことは可能です。ただ、知識や心構えが一切ない状態で、ある日突然親の重病が発覚して入院、などという事態に陥れば本当に大変です。以前なら50代になって仕事が落ち着いてから問題に直面する人が多かったと思いますが、当事者は低年齢化しています。どうすれば対処できるのでしょうか。

最も重要なのは、若者、学生が医療や介護の知識を学べる機会を設けることだと思います。現在、中高や大学の保健の授業では、そのような知識は一切教えられていません。飲酒や喫煙、運動、食事、性について学ぶだけです。座学のつまらない授業と思われがちで、話を聞かない生徒も少なくありません。

この授業の枠を生かして実践的な知識を学び、親を養う将来プランを描くのです。近い将来、家族が病気を患った際にどう対処すれば良いのか考えます。病院や老人ホームの現場を実際に見学すれば、責任感や当事者意識が芽生えるはずです。

少子高齢化時代。より若い世代が高齢者を支えていくために、教育改革が必要です。

 

参考記事:

23日付 読売新聞朝刊(東京12版)9面「あすへの考 長寿社会 幸せの処方箋」