人々の移動を支え続ける路面電車 LRT開業までの歴史を学ぶ

8月22日はチンチン電車の日に制定されています。1903年のこの日、新橋・品川間で東京では初めて路面電車が走ったことにちなんで定められました。

路面電車の愛称がチンチン電車なのは、車内に設置されている鐘の音によるものだといわれています。鐘を鳴らすことにはいくつかの理由があります。

東京さくらトラム(8月20日、筆者撮影)

 

まず運転士と車掌の間で合図を送るためです。当時はツーマンでの運行が一般的で、発車や停車、通過などを知らせ合います。また、軌道内に侵入してくる自動車や通行人に警告する「フートゴング」としても使用されました。

長崎を走る路面電車(2月28日、筆者撮影)

 

市街地を走る路面電車が最初に開通したのは京都で、1895年2月1日のことです。京都市によると京都市電では過去に「先走り(告知人)」と呼ばれる役職があったそうです。この役職は12歳から15歳の少年で構成されており、電車の先9メートル以内を進み、「電車がきまっせえ。あぶのおっせえ」と声をかけながら警告していました。このことは府令第六十七号電気鉄道取締規制によって定められていました。しかし、告知人は重労働であり少年が電車にひかれてしまう事故が相次いだこともあって、1904年までに廃止となります。

日本の路面電車の先駆けとなった京都ですが、70年3月31日に日本最古の伏見線と稲荷線が廃止され、78年9月30日には京都府すべてで路面電車が廃止されることとなりました。

 

日本では65年頃からの急速な自家用車の普及、バスや地下鉄の影響もあり路面電車は数を減らしてきましたが、2023年には栃木県宇都宮市で新たにLRT(Light Rail Transit)が開業しました。LRTとは低床式車両の活用、軌道や停留所の改良により快適性を高めたシステムをいいます。通学や通勤に利用され、平日を中心に利用者を増やしています。25年8月26日で開業から2年を迎え、19日には累計利用者数は1000万人を超えました。

宇都宮ライトレール(5月31日、筆者撮影)

 

近代の人々の移動を支え続けた路面電車は、今も全国23の都市で運行を続けています。今後、旅行先などで路面電車を見かけたら、歴史を振り返りつつ積極的に利用したいと思います。

 

参考文献:

日本経済新聞 8月20日付 宇都宮LRT、累計利用者数1000万人 想定より6か月早く達成

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC1812N0Y5A810C2000000/

 

参考資料:

京都市 京都の市電

https://www2.city.kyoto.lg.jp/somu/rekishi/fm/nenpyou/htmlsheet/toshi28.html

国土交通省 軌道法

https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/lrt/lrt_index.html