豊洲地下水 再調査が必要

 昨年の流行語大賞に「盛り土」がノミネートされました。「日本の台所」と呼ばれてきた築地。移転先をめぐる問題から話題になった言葉です。やはり私たちの食に密接に関わっているので目が離せません。

 豊洲市場で東京都が実施した地下水モニタリングの最終結果が14日に公表されました。201か所の調査地点のうち72か所で有害物質が環境基準を上回っていることがわかりました。とくに発がん性がある有害物質であるベンゼンは最大で基準値の79倍も検出されました。

 「基準の79倍」は何を意味するのか。きちんと数値の意味を理解しなければなりません。そもそも2014年から地下水の調査は実施されていました。9回目となる今回は、今まで関わった複数の調査会社とは異なる会社が初めて担当しました。専門家も「経験がない」というくらい急激に数値が上昇しています。それだけに数字に違和感をいだきます。過去の調査に問題はなかったのか。前回の調査との間に何が起きていたのか検証する必要があります。

 また、環境基準の10倍を超えると浄化したうえで下水や河川に排出しなければいけません。今後、地下水を扱うときに問題が出てきそうです。

 今回の値について健康への影響を記者会見で問われた内山巌雄さん(京都大学名誉教授)は地下水が基準値を超えたとしても「飲むわけではなく人体に影響はない」と指摘しています。記事によると、基準は1日2リットルを70年間飲み続けることを前提に設定されているそうです。

 しかし、かつての公害問題のように現時点では問題がなくても、数十年後に突如として健康問題が表面化する恐れがあります。たとえ揮発するとして地上まで上がってきたときにどれくらい人体に影響があるのか。いずれにせよ、疑問や不安が残ります。再調査にのりだすのも妥当な判断でしょう。このままですと、危険だという数値だけが一人歩きをして風評被害が出るかもしれません。安全な食材を届けるために念には念を入れて検証することを願います。

参考記事:
15日付 朝日新聞 「豊洲移転判断 遅れ必須」1面 関連記事
日本経済新聞 「豊洲地下水 追加調査へ」1面 関連記事
読売新聞 「豊洲地下水 再調査へ」1面 関連記事

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