私が中学生の頃は、「日本の産業の空洞化が進んでいる」というのは社会の教科書の決まり文句でした。ところが、何年か後には、古い言葉になっているかもしれません。今日の日本経済新聞の一面記事は、企業の研究拠点が国内に回帰しつつあることを示す調査結果です。特に、大学と企業の連携に注目が集まっています。
日経新聞は主要511社の研究開発担当役員を対象にアンケートを実施しました。その結果から、研究開発拠点の新増設先として海外よりも国内を重視する動きが広がっていることを指摘しています。4社に1社(24.3%)が、16年度以降に国内の拠点を「新設、増強、あるいは拡充」すると回答しており、海外で新増設を計画するとした企業の割合を5ポイント上回りました。国内と海外、逆転したのは今回の調査が初めてです。
その国内拠点を増強する理由として最も多かったのが、「中長期的な事業の芽を育てる」で59.5%でした。企業はここ数年新興国で製品開発をすることに注力してきました。ところが最近、AIや再生医療など先端技術が実用化段階に入り、国内の大学と企業が一緒に研究を進めることが増えてきました。文科省の調べによると、その件数は平成21年度から26年度の間に2割強増え、受け入れ額も32%伸びました。
さて、話題になっている「企業との共同研究」ですが、いち文系大学生としては、少し想像しにくいものです。書いた論文はゼミ論集に載りますが、誰が読んでくれるかは分かりません。インターンも、大学での研究と重ならない場合がほとんどだと思います。ところが、自分の研究が企業の問題意識に基づいていて、その成果が社会に活かされるとなれば、大学生の在り方がずいぶん変わるのではないか。今回の調査結果を見て、そんな予感がしています。
参考記事:
8月13日付 日本経済新聞朝刊1面 『研究拠点 国内重視に』
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