8月のリオ五輪では、ロシアの陸上チームを見ることはありません。去年の11月、国際陸上競技連盟によってロシア陸連が資格停止処分とされ、大きな波紋を呼びました。理由は、組織的なドーピングです。そして昨日開かれた理事会で、資格停止処分を解除しないことを決めました。国際陸連の検査に対し、拒否や買収などが736件あったと指摘されており、改革が進んでいないことが理由でした。これで、ロシアの陸上チームは8月に開催されるリオオリンピックに出場できないことになります。
ただ、オリンピックを運営する国際オリンピック委員会(IOC)は、ドーピングをしていないと証明された選手に限り、個人資格で出場させることを検討中です。潔白を主張するロシア選手からの反発があるためです。女子棒高跳び世界記録保持者のエレーナ・イシンバエワ選手は潔白を主張しており、出場が認められなければ「差別や人権侵害に当たる。国際裁判所に提訴します」とも話しています。
さて今日の紙面で興味深かったのは、選手の態度の違いです。ドーピング摘発の機運が高まる中、ボルト選手のチームメイトの一人に、北京五輪での不正が発覚しました。ところがボルト選手は「リレーのメダルを返上しなければならなくなっても、それは自分にとっては深刻な問題ではない」と話します。一方で、ドーピングを理由にリオへ出場できないことが決まっているブルガリア重量挙げの選手は「100%違法でなければ使う」「メダル一つで生活が変わる」という、グレーな態度です。
私たちが普段テレビや新聞で目にするような、世界を舞台に活躍している選手は、ごく一部であることを考えたいところです。どの国でも、ブルガリアの選手のように「メダル一つで生活が変わる」選手が大半のはず。禁止薬物に頼らない選択をすることは、きっと並大抵のことではありません。
だからこそ、仕組みも明らかにすることが大切だと思います。ロシアの場合は、国や陸連が一緒になってドーピングを隠していました。個人への厳しい措置と同時に、ドーピングの構図まで明らかにする。IOC、世界反ドーピング機関(WADA)にとって、今が攻めのチャンスです。
参考記事:
6月18日付 朝日新聞朝刊14版 1面『ロシア陸上 リオ不可』
6月18日付 朝日新聞朝刊14版 19面『ロシア陸上 進まぬ改革』