組体操をダンスに

 体操を基礎にして、道具を使わず人間の体だけで演じる集団芸術「組体操」。その組体操による事故が年々増加する中で、北区教育委員会は区立の小中学校で実施してきた「ピラミッド」や「タワー」を禁止することを昨日決めました。

 教育委員会の定例会で定めた基準では、膝より上で相手を支える「サボテン」「肩車」も禁じ、「ウェーブ」といったそれぞれの足や手が地面に着いている技などは実施するそうです。組体操に反対の私としてはホッとした部分もありました。

 現に、組体操による事故は骨折の他、脊髄を傷める、障害や視力・眼球運動に重い悪影響が及ぶ、精神障害に陥ると言った、生徒のその後の人生を左右する重大事故につながりかねないものです。昨日の夕方にテレビで報道された、人間ピラミッドの崩壊する衝撃映像を目にしました。新たな生徒が事故に遭うのを想像するだけでも身の毛がよだちます。

  こうした禁止運動が全国に広まっていく中で、今年2月に東京都教育委員会で開かれた審議会では、組体操の全面禁止や規制に難色を示す意見が出され、更には「組体操などの体育的な活動は、心身の調和的発達を図る教育的な効果がある」という声も上がりました。

 確かに、団結して一つの大技を成し遂げたときの達成感はこの上ない喜びかもしれません。ですが、教育の一環だからと言って「骨折するかもしれない」という危険を顧みず、無理に組体操を行う必要は無いのではないはずです。

  私が中学生の時は、男子は組体操、女子はダンスと決まっていました。楽しそうに踊る女子と、真剣な表情で大技を決める男子。今振り返ってみると、これは男子に対する「差別」なのかなと感じる部分もありました。もしあの時、男女混同ダンスでもしていたら、誰も怪我せずに達成感を分かち合えることが出来たのに、とつくづく思います。

  学校の恒例行事である体育祭。重視すべきは観客へのエンターテインメント性よりも、生徒の安全です。従って、規制をかけるかけない云々の議論に終わらせず、組体操をダンスに変える取り組みを進めてみてはどうでしょうか。そう私は強く考えています。

310日付 朝日新聞朝刊 14版 東京 29面「小中学の組体操 タワーなど禁止へ」

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