仕事終わりの串カツとビール。サラリーマンにとって、これほど素晴らしい栄養剤はないかもしれません。筆者もいっちょうまえにビールを飲むようになってからは、揚げ物は肴として欠かせないと気づきました。本日のテーマの主役は、お酒ではなく肴の「串カツ」です。
大阪・梅田駅の地下街にある老舗串カツ屋「松葉」を含む5店舗は、16日に自主撤去することを決めました。疑問に思う読者も多いと思います。何が問題だったのでしょうか。大阪市は阪神百貨店の建て替えにあわせて地下道の幅を拡大することを決定し、2年前から地下街にあった約20店舗に退去を求めてきました。しかし、「松葉」を含む5店舗は市の要請を拒否し、営業を続けてきました。市は今月8日に、設備の撤去命令を提出。11日には行政代執行法に基づき、12日までに退去を迫る「戒告書」を店側に出しました。
12日にお昼の情報番組でこのニュースを知った私は、その日の夕方に初めてお店を訪れました。すでに行列ができており、30~40分ほど並びました。順番を待っている間に前に並んでいた60代くらいの女性に話を聞くと、「ニュースで知って、三ノ宮(兵庫県)から来たのよ~」と話しました。後ろに立っていた30代前半くらいの男性は常連客らしく「今日で最後かもしれないから」と、来店されたそうです。他にも「若いころから松葉へ来ていて、今日はわざわざ神戸から出てきた。常連客としては、さみしいなぁ」という60代くらいの男性もいました。
順番が来た私は、前に並んでいた女性、後ろにいた男性と一緒に串カツをいただきました。店内は仕事帰りの方を中心に、とても盛り上がっていました。とりあえずビールを頼み「おススメは何ですか?」と男性に聞くと、「全部うまいで~」。女性の方が先に帰るときに、私の手を握りながら「一緒に食べられて楽しかったわぁ~、ありがとう」と笑顔で言ってくれました。なんとも幸せなひと時でした。
さて1954年から続いていたこの「松葉」ですが、冒頭で述べたとおり昨日で閉店してしまいました。寂しく思う常連客もたくさんいるでしょう。この問題に関して私が気になったのは、10日に橋下市長が発表したコメントです。橋下氏は、地下街の土地は「賃借権の問題ではなく、道路使用許可の範囲内で市が許可を出している。公のために必要な場合、許可を出せないことは、行政の仕組みの中で大原則だ。お店も自己主張が強すぎるのでは」と語りました。本当にそうでしょうか?店側の思い、常連客の思い、市の思い。一体、誰の思いが優先されるべきだったのでしょうか。破格でお店に道路使用の許可を出していた市は、そんなに偉いのでしょうか。
皆さんはどう考えますか?よく行くお店が強制的に退去することになってしまったら…。新たに、居心地の良いお店を見つけることはそう簡単ではないはずです。
参考記事:
16日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)社会面「地下道5店、自主退去へ」
同日付 読売新聞朝刊 (大阪14版)1,38(社会)面「梅田地下5店自主退去」
同日付 日本経済新聞朝刊 (大阪14版)社会面「大阪駅地下道、「松葉」など自主退去へ」