6月22日に最終回が放送された民放ドラマ「サバ缶、宇宙へ行く」は、福井県小浜市の高校生たちが、地元名産のサバ缶を宇宙食として送り出すまでの挑戦を描いた物語でした。若狭のサバは古くから街道を通じて京都へ運ばれ、人々の食生活を支えてきました。サバ缶の宇宙進出の背景には、地域資源を域外へ届け続けてきた若狭の長い歴史がありました。
市販されているサバ缶
「若狭宇宙サバ缶」自体は、宇宙日本食には認証されていません。
(7月8日、筆者撮影)
ドラマの舞台となった小浜市は、福井県南西部に位置する自治体です。一帯は1200年にわたって「若狭国」と呼ばれていました。朝廷へ海産物や塩を供給した地域であり、現在の志摩地方(志摩国)、淡路島周辺(淡路国)と並び、「御食国」の一つでした。
若狭湾で水揚げされた鯖をはじめ、ブリやカレイ、海藻などの海産物や塩が京都へと運ばれ、都の食生活を支えてきました。その輸送路となったのが、若狭地方の中心都市である小浜と京都を結ぶ街道群であり、現在では総称して「鯖街道」と呼ばれています。特に傷みやすい鯖は、塩を振ったうえで一昼夜かけて運ばれました。
この鯖街道は食材を運ぶ物流ルートであると同時に、人や文化、技術が行き交う重要な幹線でもありました。日本海に面した若狭には、中国や朝鮮半島との交流を通じて文化や技術が流れ込み、鯖街道を通じて京都との間にも伝わりました。一方で、京都からは祭礼や芸能、仏教文化、工芸品などが若狭へ伝わり、街道沿いには宿場町や港町が栄えました。現在でも、その歴史的な景観は残っています。
こうした歴史を持つ若狭で実際に生まれたのが、若狭高校の「宇宙日本食サバ缶プロジェクト」でした。前身である小浜水産高校時代から培われてきた水産加工技術と、若狭高校の科学教育を支えるSSH事業が結びつき、生徒たちはサバ缶の宇宙食化に挑戦しました。宇宙空間で汁が飛び散らないための粘度調整や、宇宙飛行士が食べやすい味付けや柔らかさの研究など、数多くの課題を一つひとつ解決しながら、13年にわたって先輩から後輩へと研究が受け継がれていきました。その結果、2018年、若狭高校のサバ缶は高校生が作った食材として初めてJAXAの「宇宙日本食」に認証されました。
かつて都の食文化を支えてき若狭のサバは今、宇宙食として飛び立とうとしています。しかし、その主役である若狭湾のサバは、海水温の上昇による漁獲量の減少という難題にも直面しています。
地域資源は、ただ受け継ぐだけでは残りません。どう守り、時代の変化に合わせて新たな価値を加え、多くの人に必要とされ続けることができるか。その課題を乗り越えることで初めて次の世代へつながっていきます。高校生たちの挑戦は、その可能性を示した取り組みだったのではないでしょうか。
参考記事
・2026年5月15日 朝日新聞朝刊 3面「ひと 小坂康之さん 水産高校で生徒と宇宙食のサバ缶を開発、ドラマ化された」(最終閲覧日2026年7月11日)
参考文献
・若狭おばま観光協会 鯖街道 鯖街道とは
https://sabakaido.jp/about/(最終閲覧日2026年7月11日)
・小浜市・若狭町日本遺産活用推進協議会 海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群 ~御食国若狭と鯖街道~(最終閲覧日2026年7月11日)https://www1.city.obama.fukui.jp/japan_heritage/story/index.php?id=2
・Science Portal 鯖街道から宇宙へ! ~高校生がつくったサバ缶がJAXA認証の宇宙日本食に~
https://scienceportal.jst.go.jp/stories/20191212_w01/(最終閲覧日2026年7月11日)
