6月12日付読売新聞朝刊で、『「ムスリムが放火」デマ拡散」という気になる記事を見つけました。その内容を簡単に説明しておくと、各地の寺社・酒蔵で発生している火災について、放火したのはムスリムか移民あるというデマ情報がSNS上で拡散されているといったものです。警察など公的機関は、外国人の関与は確認されていないとしていますが、Xでは表示回数が500万を超えているようです。
以前授業で、「社会が不安定になるとナショナリズムは強化される」と聞いたことがあります。先の大戦であれば、ドイツや日本がとった「ファシズム体制」がこれに当てはまるでしょう。昨今の世界情勢の不安定化は、各国の政治体制にも影響を及ぼしていると言えます。日本も例外ではなく、外国人排斥を主張する政党が躍進するといった現状があります。
こうした流れに加え、2022年イーロン・マスク氏によってTwitter買収され、XになったことがSNS上でのコミュニケーションの在り方を変えました。
それまでのTwitterは、短文を投稿するアプリとされており、比較的ユーザーの意識、民度が高いとされてきました。しかし、買収後は長文投稿機能や収益化といった総合プラットフォームとしての側面を強めてきました。それにより、「事実や意見の発信の場」から「人々の関心を集め、収益を得る場」へと変容してきました。
この変化を良いと捉えるか、悪いと捉えるかは人それぞれだと思います。ですが、人々の関心を集めること、いわゆる「アテンションエコノミー」に重点が置かれたことで、情報の質が低下していることは無視できない問題です。先にあげた記事についても、収益化のために人々の関心を上手く活用した事例であると言えるでしょう。
埼玉県・川口市を中心に暮らす移民、「クルド人」に対する攻撃も同様の事例です。この問題を取り上げたドキュメンタリーでは、デマ情報の発信者が日本人ではなく、日本人を装った外国人であるという事実を突き止めていました。ユーザー数が多く、市場が大きい日本で、彼らは人々の感情を煽るような投稿をすることで、アテンションを集め、多大な収益を得ているのです。
投稿を注意深く読んでみると、日本語が不自然であったり、「こうしてみるとより効果的ですよ」といった生成AIのコメントがそのまま載っていたりと虚偽の情報であることに気づくことも多いようです。
親しい友人とのLINEなどを用いた一対一の会話でさえも、自分が意図したように伝わらないこともあるのがSNSを通じたコミュニケーションの難しさです。ましてやXなどは顔も名前もわからない不特定多数に自身の発信が晒されるのです。こういった状況の中で、どのような態度で発信活動を行っていくべきなのかは自明でしょう。
その一方で、情報の受け手に求められる態度は十分に理解されていない現状があるのだと思います。アテンションエコノミーや収益化などは、ただ楽しいから使っているだけでは知り得ないかもしれません。それらの情報は積極的に一般に知らされるわけでもありません。ならば、ユーザーとして利用するうえで、システムに関する最低限の知識は自ら集めていく必要があるでしょう。
デジタル化が急速に進められる中で、今後、SNSを全く利用してないでコミュニケーションをとっていくことは不可能です。個人レベルの情報のやり取りなら不可欠な他者に配慮したような、思いやりのある態度が対面でのコミュニケーション以上にSNS時代には求められるのではないでしょうか。
参考記事
6月12日付 読売新聞朝刊(大阪13版)29面『「ムスリムが放火」デマ拡散』