加速する少子化ー希望を持てる社会を目指して

6月3日、厚生労働省から2025年の人口動態統計(概数)が発表された。出生数は過去最小の67万1236人で、1人の女性が生涯で生む子供の数の平均値を示す「合計特殊出生率」も1.14と、過去最低を更新した。少子化は国の想定よりも早いペースで進んでいる。国立社会保障・人口問題研究所もよると、出生数が67万人に落ち込むのは2040年と予測されていた。

 

明るい兆しが何も見えないわけではない。減少率は2.2%で、近年の5%台と比較するとやや緩やかになった。また、出生数と相関があるとされる婚姻数は約49万組で、2年連続で増加した。わずかながら出生数を増加させた自治体もある。コロナなど外部要因も大きく関係するため、全て国や自治体の成果だとは一概にはいえないが、政策の効果が全くなかったわけではないだろう。

 

少子化政策と言えば、今年4月から財源を賄うための医療保険料の上乗せが始まった。独身者や子供のいない世帯にも課されるため「独身税」と揶揄する声もある。受益者が子育て世帯に偏るという批判があるが、将来的に子供の数が増えれば恩恵は社会全体に及ぶ。経済成長や現行の社会保障制度の維持には少子化に歯止めをかけなければならない。

 

子育て世帯への給付を手厚くすることは望ましいが、それだけで出生率の回復は期待できない。日本は欧米よりも手厚い子育て政策を実施しているが、出生率はそれらの国々よりも低いのだ。支援策があるだけでは不十分だとしたら、社会に根付いている「子育て」や「子供を持つこと」に対する考え方に改善の余地があるかもしれない。たとえば、子育てと仕事の両立が難しいという意識は未だ根強い。育児休業制度など様々な支援策が整備されているにも関わらず、だ。育休を取ろうとしても歓迎されない雰囲気であったり、短期間しか取りづらかったりする現状が横たわる。単に制度を整えるだけでなく、実際に使いやすい社会認識を形成することが不可欠だ。

 

若い世代の間では、そもそも子供を持つことに魅力を感じない人が増えているように感じる。SNSは華やかな生活を送る人々の情報で溢れ、「恋愛や結婚は自分には無理だ」と考える人が多い。生まれる家庭環境が人生を大きく左右することを、スマホゲームのガチャにたとえた「親ガチャ」というスラングの流行も、「子供を持つこと」のハードルが上がってきていることの現れではないだろうか。

 

日本より少子化が深刻な韓国でも、生まれた家庭の経済力や学歴、社会的地位が人生を大きく左右するという考え方が根強いと聞く。行き過ぎた競争社会の弊害にもう少し目を向ける必要がある。完璧な親にはなれなくても子供を幸せにできるという認識を育むには、一人ひとりの「ウェルビーイング」を高めることが大切だ。実際、幸福度が高い国ほど子供を持つ人が多いという研究がある。日本は人生の満足度が低い国であり、「暮らしの質」を上げることが出生率の増加につながるかもしれない。

 

もちろん、子供を持つ・持たないの選択は自由であるべきだ。しかし、子供の数を増やしていきたいと考えるならば、子供を持ちたいと願う人への支援だけでなく、子供を持ちたいと考える人を増やしていく必要があるだろう。結婚や出産を押しつけることがあってはならないが、子供を持つことや子育ての魅力の発信により重点を置いてもいいだろう。

 

参考資料:

・2026年6月6日付 読売新聞 朝刊3面 「[社説] 結婚をためらう要因減らそう」

・2026年6月4日付 読売新聞 朝刊2面 「出生数 10年連続最少」

・2026年6月4日付 日本経済新聞デジタル「[社説] 出生数の急減に社会の変革で歯止めを」

・2026年6月4日付 日本経済新聞デジタル「出生率どう底上げ? 25年の人口動態統計、識者に聞く」

・2026年5月8日付 日本経済新聞デジタル「『独身税』で出生率は回復するか」

・2026年6月3日付 朝日新聞デジタル「少子化は止まらない 出生率より『暮らしの質』重視の子育て支援を」

・2026年5月8日付 朝日新聞デジタル「9年連続で『世界一幸福な国』 フィンランドに忍び寄る人口減の影」

・メアリー・C・ブリントン著 「縛られる日本人 人口減少をもたらす『規範』を打ち破れるか」 中公新書