5月3日、筆者はMarunouchi Antique Market vol.9を訪れました。1週間ほどにわたって東京駅周辺で開催されたこのイベントでは、Marunouchi Happ. Stand & Galleryと丸の内仲通りの二か所で蚤の市が開かれ、アンティークを求める多くの人々で賑わっていました。
ところで、なぜ「蚤の市」と呼ばれているのでしょうか。
蚤の市は、古道具や古着を売る露店市のことを指しますが、その起源は19世紀のフランス・パリの古物市にあるとされます。市場を訪れた人物が、城壁の上に積み上げられた古物の山を見て「まるで蚤の市だ」と叫んだことから広まったというのです。ノミが湧くほど古い品を扱っている、という意味が込められ、フランス語では「marché aux puces(マルシェ・オ・ピュス)」に。この「puces」は「蚤」を意味し、日本でも直訳して「蚤の市」という名称が定着したといわれています。
実際に会場を歩いてみると、家具や食器、アクセサリー、紙ものまで、多種多様なアンティークが所狭しと並んでおり、その様子は「ノミが湧いているような古びた品」というより、長い年月を経たからこそ生まれる風格をまとった品々と感じました。
中でも興味深かったのは、「切手詰め合わせセット」です。19、20世紀ごろにヨーロッパで実際に使用された切手を、元の封筒から切り取ってまとめたものが販売されていたのです。現代ならば、使い終えた封筒やハガキとともに処分されてしまうことが多い切手も、長い年月を経れば歴史的な価値を帯び、再び商品として人の手に渡るのです。その姿から、「時を超えて残ること」の重みを感じることができました。
また、その隣では、当時の文面がそのまま残された海外のハガキも売られていました。見知らぬ人が誰かに宛てて書かれた私的な言葉が、百年近い時間を経て、全く無関係の第三者の手に渡ることを考えると、その不思議さにどこか趣すら感じさせられます。筆者らが日々送り合っているメッセージや手紙もずっと保存されれば、未来の社会では歴史の一部として誰かに読まれる日が来るのかもしれません。
他に印象的だったのが、この真鍮製スタンド式ルーペです。これは19世紀のイギリスで使われていたとされる卓上拡大鏡で、「ブルズアイ(牛の目)レンズ」と呼ばれる眼玉形のレンズが特徴だといいます。支柱を動かしてレンズの位置や高さを調整できます。また顕微鏡と組み合わせて自然光やランプの光を集める集光器としても利用されていたそうです。一つの道具が二つの役割を兼ね備えている点に、当時の実用品における合理性が感じられました。
こういった歴史的な道具というと、博物館でガラス越しに眺めるものという印象を抱きがちです。しかし蚤の市では、それらを至近距離で観察するだけではなく、実際に触れて質感を確かめることができます。道具に刻まれていた細かい傷の一つひとつから、かつて誰かの日常の中で使われていた痕跡が読み取れました。
もともとフランスでは、物を大切に長く使う文化が根付いており、現在でも蚤の市が盛んに開かれているそうです。一方、日本にも「もったいない」という価値観があります。大量消費・大量廃棄が当たり前になってしまっている現代だからこそ、物を大切に使うことの大切さを見つめ直すことに大きな意味があるのかもしれません。
自分の持ち物を丁寧に使い、長い年月に耐えられる形で後世に残していけば、何十年、何百年後には誰かにとって価値ある歴史の一部になる可能性があるという点に、果てしないロマンを感じずにはいられません。
参考資料
Marunouchi Antique Market vol.9|Marunouchi.com
蚤の市とは?今さら聞けない蚤の市のキホン【エリアごとの代表市も紹介】|SHOPCOUNTER MAGAZINE
光線を操る卓上の魔術師 / Antique Bullseye Bench Condenser Desk Lens|Todd Lowrey Antiques


