新型肺炎が中国で猛威を奮っています。約10日前、1月19日までは新型肺炎の感染者は50人を下回っていたもの、直近1週間で加速度的に増加しました。中国本土での感染者数は、30日11時現在、7742人に上ります。日本でも増え始めて、予防策や感染者の治療が急がれていますが、中国は日本と比にならない超大規模な対策、対応を講じています。
そこで、
・今月上旬から湖北省十堰市に帰省しているAさん
・浙江省在住、同省杭州市の大学に通うBさん
・甘粛省に住む、院試浪人生のCさん
3人の知人に連絡を取り、街や大学の現状、社会への影響や収束見込みを聞きました。
まずは、自身や街の状況について。
新型肺炎の発生源である湖北省に滞在するAさんは「市を通る主要道は全て封鎖された。私と家族は直近4日間一切外出せず、家に引きこもっている」と言っていました。先週尋ねた際は「湖北省だが、武漢から離れているので全然大丈夫。春節になったら親戚や友人の家を回って挨拶する」と返答していたものの、状況の急激な悪化に伴い、家の中に引きこもることを余儀なくされたそうです。
Bさんは1月上旬から両親の実家がある湖南省郴州市に滞在していましたが、隣接する湖北省で感染者数が激増し始めた22日に浙江省に逃げ帰ったそうです。しかし、浙江省でも新型肺炎は流行し始め、30日現在、湖北省に次ぎ2番目に感染者が多い省となっています。「湖南省で公共交通機関を利用していたので、自分が感染していないか心配だ。浙江省では、観光地だけでなく映画館やデパートも全て休業している。最近は外に出ず、家でゲームしている」とのこと。食料を外に買いに行く必要がないか尋ねたところ、春節を祝うためにたくさん買い置きしていたので大丈夫だそう。
Cさんは感染者がほぼいない農村に住んでいますが、それでも家に閉じこもっているそうです。「昨日、外に買い物に出かけたが、マスクはとうに売り切れていた。買い貯めてあるマスクが尽きないか心配だ。」また、北京に住むCさんの親戚の家には、保健局による立ち入り検査があったそうです。春節の前日24日の朝に突然ドアを叩く音があり出てみると、保健局の人が2人マスクと防護服を着用して立っていたそう。矢継ぎ早に、武漢に最近行ったか、行く予定はあるか、など聞かれた末、質問に答える様子を無理やり証拠写真に撮られる、という一悶着があったらしいです。
地域を問わず誰もがずっと家に引きこもり感染を避けていることが分かりました。本来、親戚や友人と会ったり、旅行をしたりする、中国で最も重要な祝日の時期に騒動が起きたことが非常に残念、とか、在宅を強いられて極めて退屈だ、という声もありました。
次に、大学の状況について聞きました。
Aさんが通う大連理工大学では、新学期の開始が延期されることが決まったものの、いつになるかは未定。Bさんの浙江工商大学は予定通り23日から授業が始まるそうです。「春節の休みなので学生と先生は全国各地に帰省しているが、誰かが感染したという話は聞いていない。大学よりもっと早くから授業が再開する小学校や中学校は大変だと思う。」浪人中のCさんは、12月に受験し3月上旬発表予定の院試について「結果は予定通り発表されると思うけど、二次試験の時期は遅くなるかもしれない」とのこと。新型肺炎の流行は、学生生活にも大きな影響を与えていることが窺えました。
感染拡大の理由や対策状況について。
新型コロナウイルスの発生源は、武漢の屋外市場で取り引きされていたコウモリだったとされています。これについては、3人とも「コウモリを販売しているなんて初めて聞いた。観賞用ではなく、食用かも」と言っていました。コウモリの売買は、中国全土で一般的という訳ではないようです。また、感染拡大の理由について、無症状の潜伏期間にウイルスが他の人に移ってしまうことが原因だと考えていました。
対策として、新型肺炎の患者を専門に受け入れる病院が目下建設中です。武漢では24日早朝に新病院の工事が始まり、10日間で完成する予定です。信じられないような計画ですが「昼夜問わず24時間ぶっ続けで工事しているので、本当に10日くらいで完成すると思う」とのことでした。河南省でも同様に病院の建設が進んでいます。また、医療機関を支援すべく募金活動の輪も広がっています。話を聞いた3人とも、アリペイを通じて湖北省の機関に貯金やお年玉を寄付したそうです。資金面よりも医者と医療品の不足が深刻というニュースもあります。Bさん曰く、中国各地の医者は旧暦の大晦日にあたる24日の夜に湖北省に向かい、支援にあたっているそうです。「お医者さんは春節でも休みがなく、ずっと働いている。本当に偉いし尊敬している。しかし、患者が急増したため、人数が不足しているのが現状だ。」医者が身につける高性能のマスクや防護服などの物資も大幅に不足しています。医療品を生産する各地の工場も本来は休業のはずですが、23日頃から仕事を再開し、毎日残業で生産にあたっているそうです。
政治経済や社会への影響に関して意見を聞くと。
Aさん「病院や医者はもちろん、政府も全力で頑張っている。ただ、テレビやネットの報道も、毎日、新型肺炎のニュースばかりで飽きてきた。」Cさん「政治面への影響は難しい。経済面では、中国だけでなく外国の観光業にも大きなダメージが生じると思う」とのこと。海外旅行を予定していた多くの中国人が予定をキャンセルしたので、タイや日本、シンガポールなどの周辺国の経済にも大きな影響が出ると予想していました。
収束時期の見込みは。
「2〜3ヶ月程度かと思う。でも中国の底力を信じている。絶対に克服できるはず。」という意見があった一方、「今後一旦落ち着くと思うが、春節の休暇が終わった後、来月9日から再拡大する可能性もある。いつ収束するかは全く見当がつかない」という見解もありました。
また、日本への言及もありました。「関西在住の日本人も感染したと聞いた。ごめんなさい。湖北省の人たちは日本に旅行する前は何も知らず、悪意はなかった。」「日本が中国にマスクを寄付しているというニュースを見た。本当に感謝している。」
3人との連絡を通して、中国政府と国民が危機感を持ち、全力を挙げて病気の鎮圧に取り組んでいることがよく分かりました。20日過ぎから大規模な対策が始まったので、そろそろ感染者数は一時的に落ち着くかもしれません。しかし、春節の休暇が終わり職場や学校が再開すると、状況が再び悪化する可能性は否めません。
筆者個人としては、日本での感染拡大はもちろん、日中学生交流への影響も心配です。私が通う大阪大学では、中国語専攻1年生が春休みに予定していた上海語学研修の中止が決まりました。独立行政法人の国際交流基金日中交流センターは、春期の大学生渡航・交流事業について、状況を注視しなるべく早期に判断を下したい、とコメントしています。去年は両国の関係が大きく改善し「日中青少年交流推進年」として230以上の外務省認定の交流事業が実施されていました。交流の継続に支障が出ないか心配です。中国が災難を早く打破できることを心から祈ります。
武汉加油!中国加油!
参考記事:
朝日新聞、日本経済新聞、読売新聞 新型肺炎流行 関連記事
参考資料:
百度百科「新型冠状病毒肺炎 疫情实时大数据报告」
https://voice.baidu.com/act/newpneumonia/newpneumonia