“an Alliance of HOPE”はアメリカとだけでいいですか?

安倍首相は29日午前(日本時間30日未明)、米議会で演説を行いました。今までにも吉田茂首相、安倍首相の祖父である岸信介首相、池田勇人首相が登壇していますが、上下両院合同会議でのスピーチは日本の歴代首相では初めてのことです。今回の訪米が議会の開会中ということもあり、年明けからオバマ政権に打診してきたそうです。

安倍首相は、1957年に岸首相が行った演説と同じように「日本が世界の自由主義国と連携しているのも、民主主義の原則と理想を確信しているからであります」と切り出しました。そのあとに、「先の大戦に対する痛切な反省」を語り、「苦しみを与えた事実から目をそむけてはならない。歴代総理を全く変わるものではない」と従来の歴史認識を引き継いだとしています。この演説は“Toward an Alliance of Hope”、「希望の同盟へ」と題され、「未来志向」な演説であったとメディアに取り上げられました。

安倍首相は日米のつながりを「希望の同盟」と呼びましたが、そうした関係はアメリカとだけ築けばよいのでしょうか。今回の演説を行うにあたり、韓国系団体は米議会前で抗議集会を開いたり、新聞に全面広告を出したりして、首相に対して「明快な謝罪」を求めました。しかし、「謝罪」「おわび」はなし。韓国側はさらに批判を強めてくるでしょう。

確かに、韓国側から歴史問題の解決に向けて日本を受け入れようとする意欲を感じ取ることはできません。日韓首脳会談の開催に関しても歩み寄りは見受けられません。そうであっても、「苦しみを与えた事実から目をそむけ」ないのは当たり前のことであり、その上で日本が何をするのか、どう働きかけていくのかが求められているのだと思います。韓国側が受け入れてくれないからといって、こちらがあきらめたのでは何も進んでいきません。常に歩み寄る姿勢を見せることが重要であると考えます。

“an alliance of hope”をアメリカとだけでなく、より多くの国との間で保つために、歴史を直視した上での「未来志向」が求められます。戦後70年の首相談話である「安倍談話」ではどう述べられるのでしょうか。日本のトップとして、こちらから歩み寄る姿勢を貫く。その態度がしっかりと伝わる言葉で世界に発信してほしいと思います。

30日付各紙朝刊 安倍首相、米議会演説関連面