就職活動において学生が企業に対して有利な立場にある状況、いわゆる「売り手市場」が指摘されて久しい現在。現在主に大学3年生である、2021年卒業予定者を対象にしたインターンシップが既に始まっています。筆者の考えとしたら、インターンシップといえば学生が企業の内部に入って業界や製品、今後について「学ばせてもらう」機会なのですが、近年は企業がインターンシップに参加した学生に報酬を支払う「有給インターン」も増えているのです。
大手企業では、例えば楽天が3カ月以上勤務できる学生に時給1,200円を支払い営業やマーケティングを体験できるプログラムを設けたり、日本たばこ産業(JT)では9月に4日間の日程で1日1万円支給し「未来の嗜好品」を企画・提案するインターンシップを提供したり、業種を問わず有給インターンは徐々に広がりを見せています。
現在大学4年生の筆者も、昨年の夏はインターンシップに参加しました。とはいえ、お世話になったのは民間企業ではなく官公庁。都内2か所の役所で計5週間参加しました。初めて社会人の中に一人で放り出される機会でしたが、デスクワークはもちろん、業界団体の陳情や催し物の視察、先進事例の取り組み視察など充実した内容を組んでいただいたことは今でも感謝してもしきれません。
筆者はもともと公務員志望で、昨年3月から大手予備校に通いダブルスクールを続けてきました。公務員試験を受験する学生の多くは民間企業を併願することなく、幅広い公務員試験を受験してその中でご縁があった役所に就職するケースがメジャーです。いわゆる官僚である国家公務員総合職試験や一般職試験、裁判所や国会、県庁や市役所、労働基準監督官や財務専門官までその種類は多様です。
しかし、筆者は民間企業も併願しました。理由は簡単。とても不安だったからです。受かるか分からない試験だけを受け続けるのは精神的にきついものがあったため、それまであまり考えていなかった民間企業を3月中旬になって検討し始めました。しかし、4月下旬から本格化する公務員試験と同時並行で民間企業の就活を行うのは体力的に、というか日程的に厳しかったのは覚えています。
結果的に、筆者は大手インフラ企業1社と念願の東京の役所1か所から内々定をいただき、後者を選択しました。これから就職活動を控える、または既に始めている後輩に偉そうに言うのは気が引けますが、公務員と民間の併願は決して楽ではないということは知ってほしいです。民間企業の面接で公務員試験も受けていることを正直に伝えれば多くの場合企業側は敬遠するでしょうし、公務員の内々定が出るのは早い職種で7月、一般的には8月や9月になることも多いです。精神的に疲れることは間違いありません。一方、営利ではなく「公益のため」という志を抱いて、民間の就活では必要のない試験勉強を勝ち抜いた人と仕事をするのはとても誇らしいことでもあります。
しかし、だからといって今の就活スケジュールを改めてほしいとは思いません。会社だって優秀な人材を早く自社に入れたい一心で採用に本気で挑んでいますし、役所も今までの伝統的なスケジュールがありますから、何万人が受ける公務員試験の日程は民間企業の採用活動にも大きな影響を与えます。売り手市場と言われる昨今、相対的に公務員志望の学生は減少傾向にありますから、役所の方が今まで以上に必死かもしれません。
もし、就職活動の日程に意見や不満がある場合、それを変えうるだけの力がある立場になるのが一番の近道でしょう。そのポストに行くまでにいろいろな勉強をして、「やっぱりあの時のあの就活スケジュールも悪くなかったのか」と思う日がくるかもしれません。今与えられた、いわば所与の条件で、公務員志望の人は公務員一本でいくのか、それとも民間も考えるのか、よく検討する必要があります。
参考記事:
14日付 読売新聞朝刊14版 29面(社会)「インターンは有給で」