「若者の車離れ」が話題に上る昨今ですが、読者の皆さん、車は好きですか。都心に暮らす筆者にとって、日常の中でその必要性を感じる瞬間はほとんどありません。維持費がかさむばかりか、駐車場を見つけるのが難しく、移動時にお酒を飲めなくなくなってしまいます。電車の方がはるかに便利でコスパが良い。周囲を見渡しても、好んでいる人は少数派で、大多数は運転に縁のない生活を送っている印象があります。
一方、普段運転する機会はないが免許だけ持っている、という人はそれなりにいます。筆者は、つい2週間ほど前に免許を取得しました。4月、都内の自動車学校に入校し、「夏休み前に取れれば旅行先でも重宝するだろう」と呑気に構えていました。
「運転なんて誰にでもできるもの」そうタカをくくっていた私の考えは、路上教習が始まってすぐに消え去りました。駐車車両の脇から突然、車線に飛び出してくる人。赤信号を堂々とわたる自転車。車間距離を空けず、詰めてくる後続車。車両の間を悠々とすり抜けていくバイク。前も後ろも、右も左も、見えるところも見えないところも、どこもかしこも危険でいっぱいです。全方角に注意を集めなければならず、運転中は終始パニック状態でした。
言い訳をすれば、土地柄、人通りも車通りも多く、乗車していたのはマニュアル車でした。難易度が高かったのです。思考のキャパシティをはるかに上回る危険の数々に、「もう一人では運転できない」と弱音を吐く始末でした。
もう一つ、感じた危険があります。それは、「慣れ」です。油断が生まれると、運転動作や注意力が鈍ります。ハンドブレーキを下ろし切っていなかったり、ギアを違うところに入れてしまったりと、「つい」間違えて教官に注意されることもありました。それがアクセルとブレーキの踏み間違いだったら。そう考えると、恐ろしくて仕方がありません。
近年、高齢ドライバーによる事故が目立ちます。警察庁によると、75歳以上のドライバーによる死亡事故は、今年上半期だけで149件。そのうち、17件がアクセルとブレーキの踏み違いによるものだそうです。
アクセルを一気に踏み込んでもエンジンの出力を絞る仕組みがあれば、急加速は抑えられます。既に存在はしていますが、進行方向に障害物を検知した場合に限って作動し、歩行者や自動車に反応しない場合も多くあります。トヨタが新たに打ち出した安全装置からはこの旧機能が外され、いつでも急アクセルの加速を抑えることができるようになるそうです。ただ、高速道路への合流時や緊急回避でスピードを急に上げる必要がある場合には、かえって危険になることもあります。
いくら機能が充実しても、自動運転車ばかりが走る時代になっても、事故が発生するリスクを完全に無くすことはできません。もちろん、技術レベルの高い車は事故を回避する可能性を高めますが、最終的に判断するのは人間になるのではないかと思います。技術革新に期待しつつ、歩行者も運転者も、一人一人が危険を察知して回避する意識を持つ必要があります。
そうなると、やはり都内では電車の方が利便性は高いです。当分、運転はせずに、免許証は身分証明書として使うこととしましょうか。
参考記事
11日付 新聞朝刊(東京版)1面「急アクセル抑制 新機能」