日本有数の観光都市「京都」。ここ数年、観光客の数が毎年5000万人を超えるほど、国内のみならず海外でも人気です。しかし、それほど多くの人が押し寄せるということは、何かしら問題が起きてしまいます。今日の京都では「観光公害」が注目されています。
観光公害とは訪問客による迷惑行為、例えばゴミのポイ捨てや環境破壊などを指します。英語圏では「オーバーツーリズム(overtourism)」と呼ばれており、世界各国で起きています。
京都ではどのような公害が問題視されているのでしょうか。特に、「交通機関の渋滞」が挙げられます。同市街は南北と東西に直行する「碁盤の目」になっています。移動の際は、必ずと言っていいほど大通りを利用しなければならず、そこに観光客の車も加わるので、頻繁に渋滞が発生します。また、中心地からバスで向かおうとしても、1本か2本は見送らなければならないほど、車内も混雑しています。トラブルを未然に防ぐため、係の人が乗り降りの案内をする姿をよく見かけます。
これに対し、京都市観光協会はオーバーツーリズム対策事業を立ち上げました。特定の時期、時間帯、場所に観光客が集中することを和らげ、同市全域で分散して楽しめることを目的としています。
観光客が集中してしまうのは、メディアの影響が強いようです。「京都」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。金閣寺や五重塔、グルメでは生八つ橋などがパッと浮かびますよね。それは無意識に刷り込まれたイメージだと言えます。よって今日の旅行は、その感覚的なイメージを自らの目で確認しに行くという要素が強いです。また、それは一般化され多くの人が共有し、目的地も自然と類似していきます。
「もっと魅力的な街やグルメがあるのに・・・」
押し寄せる人波を見ると、そう呟いてしまいます。オーバーツーリズムとは「街」という水槽に、大量の「観光客」という砂糖が溶けずに沈殿している状態です。完全に溶けた水溶液になるにはどうしたらいいのでしょうか。入場制限をして砂糖を減らすのか、それとも水を足すのか。私は後者を支持します。
そのためには情報発信が欠かせないでしょう。千本鳥居で有名な伏見稲荷大社のある伏見区は、日本有数の酒どころで知られています。しかし、海外の方にはあまり認知されていません。積極的かつ継続的な情報発信によって、観光公害は少しずつ和らいでいくでしょう。京都はこれからも、日本を代表する観光地で輝いてほしいと願っています。
参考記事:
10日付 朝日新聞朝刊13版12面「どう思いますか 観光公害」