時給という名の甘い蜜

「高時給1250円!」「時給は1100円から!」

アルバイトの求人サイトを覗くと、このようなキャッチフレーズで溢れています。働くにあたって、時給は極めて重要な項目です。しかし、それ以上に大切なことがあるのではないでしょうか。

政府は11日、「骨太の方針」の原案をまとめ、最低賃金の引き上げをより早期に達成することを示しました。その目標値は全国加重平均で1000円。この動きは2016年から始まり、年率3%をめどに引き上げをおこなってきました。その結果、15年度の798円から、18年度では874円までに上昇しました。

大学生にとってアルバイトは、大半がするものと認知されている気がします。しかし、契約前に提示された条件と大きく違い、雇用者と揉めるケースも少なくありません。

私が聞いた話を例に挙げましょう。焼き肉屋さんで働いていた友人の体験談です。そこは研修期間を設けており、勤務開始から3ヶ月間、時給は研修生ということで100円ほど低く提示されました。休憩時間に先輩と話したところ、「自分は1年近く働いているのに、まだ研修生扱いだよ」と言われ、衝撃を受けました。彼は店長の管理に不信感を抱き、後日辞める旨を電話で伝えました。これに対し、店長は「たった1日しか働いてないから給料は出さない」と強い口調で反論。しかし、両親が代わって主張したところ、すぐに相手が謝罪し解決しました。

また、彼にそこの焼き肉屋さんを選んだ理由を問うと、時給の高さが魅力的だったからと俯いて答えました。

私はこの引き上げに関しては賛成です。しかし、雇用者側の不注意、非正規労働者の増加といった労働環境の問題にも焦点を当てるべきだと思います。バイト先のストレスが原因で、自ら命を絶つこともあります。短期的な報酬ではなく、安定した環境を目指す、長期的な視野が雇用において必要だと感じます。

参考記事:

12日付 読売新聞朝刊 13版1面「最低賃金1000円「より早期に」」