【特集】早く確実に。 統一地方選・府中市選管の開票

4月21日、統一地方選の後半戦に伴い、多くの自治体が投開票日を迎えました。開票と言えば、マスコミ各社がこぞって競うものがあります。出口調査による当確情報と、開票速報です。

この開票速報、注目されている自治体の開票所には多くの記者が出向きます。中にはアルバイトを雇い、列ごとに双眼鏡を使って票数をカウントするメディアも。いずれ明らかになる選挙結果を急ぐ必要があるのか、という議論もありますが、今回は敢えて考えず、開票作業の現場に出向いてみました。その様子を時系列で振り返ります。

会場は市の総合体育館(筆者撮影)

向かったのは東京都府中市の開票所。今回の統一地方選では市議会議員選挙が実施されました。一般にはあまり知られていませんが、選挙関係者の間で、府中市の開票作業は「速い」ことで有名だといいます。その秘訣はどこにあるのか。市の担当者の方にお願いし、取材させていただきました。

開票作業が始まるのは午後9時。始まる15分前に到着すると、既に各係の人が集まり始めたところでした。

開票作業は、選管の名簿に記載のある人であれば、メディアでなくても見学ができます。地元の議員選挙ということもあり、参観者席には各陣営や応援者ら70名がスタンバイ。今回、メディアの姿は特段目立っていなかった一方で、警視庁の腕章をつけたスーツ姿の方が6名参観していました。

参観席の様子(筆者撮影、ぼかしを入れています)

  • 午後8時58分
    選挙長が選挙会開会の挨拶。
  • 午後8時59分
    投票箱の鍵が空けるよう指示が出ました。

投票箱の箱には鍵がかかっている。(筆者撮影)

  • 午後9時01分
    開票作業開始。投票箱がひっくり返され、市の職員や臨時単発派遣等で雇われた人が票の仕分けをはじめました。

開票開始。複数の班ごとに投票用紙を仕分けていく(筆者撮影)

  • 午後9時13分
    点検作業開始。仕分けられた票が本当に正しいか、チェックが行われます。

仕分けと点検は並行して行われる(筆者撮影)

  • 午後9時20分
    すべての投票箱が空に。公募からくじで選ばれた開票立会人が、残票の無いことを確認します。ここで、「手が空いたら点検に回ってください」と放送の指示。効率よく人員を配置することも迅速な開票につながります。

空になった投票箱(筆者撮影)

  • 午後10時00分
    現時点での中間発表。確定した票の束を、500票ごとにカウントしたものが読み上げられました。参観席からは「0か500しか無いのか」とちらほら不平の声も。

発表事項は、FAXを使ってマスコミ各社の支局へ送られる(筆者撮影)

「タタタタタタ…」

仕分け作業が終わると、票を数える計数機の音が会場に響きます。
仕分けられた票は別の計数機で2度確認されます。市内にある競艇場の紙幣計数機を転用したものにはじまり、現在は専用の大型計数機2台と、小型のもの複数台を使っているようでした。そして、作業が終わると同時に、その場所の片付けが始まります。更に手の空いた人は片付けを始めてしまうというところにも効率化の鍵があるようです。

大型の計数機(筆者撮影)

ところが。

  • 午後11時15分
    「再度点検が必要になりました。机等の運搬をお願いします。」

どうやら票の計数で不具合が出たとのこと。机を片付けたことが仇となってしまいました。速いことで有名なだけに、客席からはため息も。長年開票作業を参観しているという男性は「最悪の開票だ」と言い残して帰ってしまいました。

片付けた机を再度設置する(筆者撮影)

結局、日付をまたいだ翌0時11分、開票結果が読み上げられて選挙会が終了しました。後日資料を見ると、持ち帰り票が2票あったとのことで、この確認で再点検を行ったようです。

閉会にあたり、挨拶をする選挙長(筆者撮影)

実際に見に行って思ったのは、ただひたすらに、淡々と作業が続くということ。翌日は月曜で、職員は通常出勤もあるというのに、作業現場からの文句などは一切聞こえませんでした。再点検時に聞こえたため息も、参観席からのもの。開票は正確で当たり前かもしれませんが、この「当たり前」を維持することの大変さを体現した回だったように思えました。

あまり表沙汰にならない開票作業ですが、実は公開されています。
次の選挙はあなたも、開票作業を参観してみてはいかがでしょうか。