もし、加害者になったら…と考えて

「歳をとって事故を起こすと、裁判中とか刑務所の中で最期を迎えるかもしれないよね」「それは嫌だね」

東京・池袋で87歳の高齢ドライバーが交通事故を起こし、母子2人が死亡したニュースをラジオで聞いた時の祖母との会話です。奇しくも、80を超えている祖父が運転する車の中でした。

筆者は運転免許を持っていません。この事件を知り、祖父の運転に頼っていることへの不甲斐なさを感じました。祖父に「運転大丈夫?」と聞くと、「視界が悪くなるから明るい時間に出かけるようにしている。大丈夫」と。自分の体調に注意しながら運転していたことに少し安心しました。

この事故について祖父は「歩いているだけなのに、老人のせいで事故に巻き込まれるなんて一番かわいそう」と話します。年齢を考えれば、決して他人事ではありません。事故を起こしてほしくないからこそ、いつまでも「大丈夫」と言い続けられるなら、どこかで免許の返納を迫らざるを得なくなると考えています。

今日の日経新聞に「池袋暴走事故1週間 高齢者運転 対策道半ば」という記事が掲載されていました。19日に起きた池袋の事故は、発生時刻が昼過ぎということからも操作ミスが原因と見られています。免許の更新時、75歳以上には「認知機能検査」が義務付けられているものの、公共交通機関の廃止が進み、車がないと暮らしが立ち行かない地域も存在することから、対策がなかなか進まないのが現状です。

近頃、多発する高齢者運転による交通事故。他人の人生を壊し、自分や周囲の人生も台無しにします。楽しく過ごせたはずの余生を刑務所で送ることになり、どんなに素晴らしい業績を上げた人でも、人生の最終章で「犯罪者」に転落してしまいます。

ハンドルを握っているおじいちゃん、おばあちゃん。「自分は大丈夫」ではなく、事故を起こした時に子供や、孫はなんて思うか、ほんの少し想像してほしいなと思います。行政の取り組みはもちろん大切ですが、それ以上に一人一人の「心掛け」こそが大事ではないでしょうか。

今日から始まる10連休。高速は徐々に込み始め、普段より一般道路にも車が多いように感じられます。悲惨な事故が起きないことを祈るばかりです。

参考記事:
27日付日本経済新聞朝刊 13版 35面(社会)「池袋暴走事故1週間 高齢者運転 対策道半ば」