文化財を守る覚悟と緊張感

今月16日、パリのノートルダム大聖堂で火災が発生し尖塔や屋根が崩落しました。記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。

ノートルダム大聖堂は1163年に着工し、約200年かけて現在の形になりました。観光名所であると共に、パリのシンボルであり人々の生活の一部でした。火災の様子を涙ぐんで見守るパリ市民の様子が伝えられました。

1163年、日本は平安時代。平氏一族が権力を持ち始めた頃です。

そのころ、そしてそれ以前に建てられた建物は日本に数多く存在しています。現存する世界最古の木造建築群として有名な法隆寺はその代表例です。

古くから残る建物は、学術的に貴重な存在です。当時の人々の営みを伝えるいわば「人類の財産」です。そのため、火災などの建物を傷つける要因に関しては細心の注意を払う必要があります。特に、日本の古い建造物、特に神社仏閣はほとんどが木造です。一度火がつくと燃え広がるのが早いため、入念に対策を立てる必要があります。

以前、比叡山延暦寺を訪れた際驚いたことがあります。寺専用の消防車が用意されていたのです。

ドアの部分に「比叡山延暦寺」の文字が見える。

お寺の方のお話によると、「火事が起こった場合、延暦寺は山中にあるので、ふもとの消防署から呼んでいたのでは間に合わない。そのために、専用の消防車を持ち火が燃え広がらないうちに被害を最小限に食い止めることが必要。」とのことでした。

重要な文化財を守る覚悟と緊張感を感じました。

ノートルダム大聖堂では、火災の原因究明が進められています。そして、防火体制がずさんであったことが分かってきています。修復工事に関わっていた作業員が現場でタバコを吸ったほか、電気コードの配線が木造の屋根組み部分を通っていました。

一度燃えてしまったものは、取り戻すことはできません。再建はできますが、以前と全く同じものを作り出すことはできません。

人々の歴史を後世に伝えるため、文化財は丁寧に守っていかなければならないのです。

参考記事:

25日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)11面(国際)「パリ大聖堂火災 防火の不備判明」

16日付 読売新聞夕刊(大阪3版)1面「ノートルダム大聖堂 火災」