研究者育成、他力本願ではダメ

海外で若手経済学者が培った知見が日本に還流されれば、日本経済の競争力を高める大きな下地になりうる。こうした流れを作り出すことが課題になりそうだ。

本日の日本経済新聞2面の「若手経済学者 海外に活路」の記事は、上記のように締めくくっていました。記事によると、日本の大学よりも報酬額が高い海外に若手の経済学者が所属するようになっていること、経済学者がIT企業を中心に貴重な人材として求められていることが述べられています。

ですが、海外にどんどん流出してしまっていることをもっと深刻にとらえるべきです。優秀な研究者が日本の大学にいないとなると、日本で新しい知見が生み出される土壌すらなくなってしまいます。優秀な人材を育てる力もどんどん衰えてしまいます。

日本の研究者を養成する仕組みは、すでにほとんど機能していないといっても過言ではありません。今年9月には、九州大学の元院生が火事で亡くなった事件では、非常勤研究員の経済困窮が明らかになりました。正規雇用ではなく、非常勤で買いたたかれる、そんな環境で人材育成ができるはずがありません。

日本の大手家電メーカーが経営不振になった際、優秀な技術者は韓国や中国に大量に流出したとされています。結果として技術力はどんどん衰え、今では立場が完全に逆転してしまっています。

日本人だからいつか日本に戻ってきて貢献してくれる、そんな甘い話はありません。GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)をはじめ、世界で優秀な人材の獲得競争がすでに起こっています。帰ってきてもらうことを考えるのではなく、日本の研究機関をどう充実させていくのかという視点で考えるべきではないでしょうか。

参考記事

23日付 日本経済新聞朝刊(東京13版)2面(総合)「若手経済学者 海外に活路」