ライドシェア、民泊、メルカリ…。昨今、シェアリングエコノミーが急速に広がり、身近な存在になりつつあります。今日は、そのうちの一つ、シェアサイクルについて考えたいと思います。
中国、オランダ、アメリカなど、世界の数ある自転車先進国に比べ、日本での普及は遅れてきました。私も国内では使ったことがなかったのですが、ロンドン観光の際には何度か利用しました。日本に比べ電車代が割高だったためです。一駅間乗車するだけでも350円を超えてしまいましたが、シェアサイクルの基本料金は一日2ポンドほど。30分以内に返せば何度でも無料で利用できました。
驚いたのは、サイクルポート(駐輪場)の多さです。中心地では、数百メートルごとに乗り降りできる場所があり、クレジットカードを利用できます。施錠ナンバーを発券する機械には日本語の表記もありました。観光客だけでなく、スーツを身にまとったビジネスマンが利用している姿も見かけました。
今日の日本経済新聞の記事には、自転車シェアリングのコギコギ(東京・渋谷)が地方自治体向けに50万円から利用できる実証実験プランを始めたと紹介されていました。コギコギは民間企業で、都内でも一日料金や月額料金という形でサービスを展開しています。インバウンド、つまり訪日外国人などの間でシェアサイクルの利用が増えるなか、まずは小規模で導入してみて利用状況を検証したい自治体などのニーズに応えるのが狙いです。10月に第1弾として奈良県桜井市が導入しました。
背景には、政府が6月に閣議決定した「自転車活用推進計画」の影響がありそうです。サイクルボートの設置数を1700か所に増やす、先進的なサイクリングを目指すモデルルートを40ルート作るなど、具体的な目標が盛り込まれています。調べてみると、東京都にも、ドコモが運営しているコミュニティサイクルという取り組みがあり、実際に利用してみました。街で見かけたことはなかったのですが、駐輪場は予想していたより多そうです。おサイフケータイやHP上でクレジットカード登録をすることで利用できます。最初の30分は150円、以後は30分毎100円と気軽に使えました。
通勤時の混雑緩和や環境への負荷の低減など、メリットはたくさんあると思います。交通網が発達していない地方でも、観光地間の移動手段として一役買いそうです。また、皇居周辺をサイクリングすると、いつもとは違う目線で景色を楽しめました。近年話題になっている運動不足にも、効果が見込めそうですね。
とはいえ、実際に乗ってみるといくつも注文をつけたくなります。マップで場所を検索することはできますが、調べないまま走り出してしまうと、サイクリングの途中でポートを見つけることはできません。駐輪場はオフィスビルの片隅や商業施設の脇にあることが多いため見つけづらいのです。スポットの少なさもやはり感じました。また、言語は日本語と英語しか選べません。観光客向けに作るのであれば、多言語化を進める必要性があるでしょう。
スポットをただ増やせばよいというわけでもなさそうです。トラブル時の対応や安全への対策が求められます。ロンドンでも導入直後は、自転車利用者の増加で交通事故が相次ぎ、自転車レーンを作るなどの対策が取られました。
課題は山積みですが、シェアサイクルの普及には、自治体との協働が欠かせないと思います。皆さんは、通学や通勤で、また観光地で、コギコギしてみたいですか。
参考記事 5日付 日本経済新聞 朝刊 14版 「自転車シェアのコギコギ、地方向け小規模プラン」